月別アーカイブ: 2016年5月

『大地の躍動を見る』

山下輝夫編著『大地の躍動を見る:新しい地震・火山像』(岩波ジュニア新書 2000)を読む。
東京大学地震研究所の設立75周年記念事業の一環として企画されたもので、地震や火山の仕組みや地球の内部構造、また、GPSを用いた地殻変動や海面高度の測定方法など、1章ずつ9人の教官が分担して執筆している。東大地震研究所は関東大震災の2年後に設立されたので、「地震」という名称を冠しているが、当初から火山噴火も研究の対象であり、現在では固体地球科学の研究所として、世界有数の規模をもつまでになっている。

代表著者の山下氏によると、地震学は一つ一つの物事が互いに影響を及ぼしあうことにより全体が成り立っている「複雑系」の学問である。地震はある日突然起こるものでなく、年数センチの速さで動き続けている地球のプレートやマントルの動きの積み重ねの結果なのである。また、地殻の対流だけでなく、太陽エネルギーによる大気や海流の動きでも地球内部は常に揺らされているし、月の引力によって海だけでなく大地も何十センチと上下運動を続けているのである。大規模災害をもたらす地震の研究に、地震計にも記録されない微弱な地球の揺れのデータを揃えていくことが大切なのだ。
およそ中高生に理解できないような専門的な話もあったが、地震学の奥深さは良く伝わってきた。

『スローサイクリング』

白鳥和也『スローサイクリング:自転車散歩と小さな旅のすすめ』(平凡社新書 2004)を読む。
自転車文学研究室なるものを主宰する著者が、目的地に向かって時間や距離を競うようなサイクリングではなく、国道から一本入った旧道の街並みに誘われ、廃線跡や田んぼ道に寄り道をし、そこで生活する人々の息遣いを感じながら走る「スロー」サイクリングのあり方を紹介する。さらには、真っ直ぐな自動車道や整然とした街並みといった近代主義に対置して、道なき道を走り、車も通れない細い路地を抜けていく自転車による勝手気儘な旅、引いては自分の存在そのものに見合ったスローな生き方を提唱している。

  □ 自転車文学研究室 CyclotourismeJP

「日米安保 考える好機に」

米大統領候補で共和党候補の指名を確実にした不動産王ドナルド・トランプ氏が在日米軍基地を巡って、過激発言を繰り返している。「その国を守っているのだから、経費すべてを駐留国側に負担させるべきだ」「財政赤字を抱える米国に世界の警察官となる余裕はない。自動車産業で経済大国になった日本を、なぜ米国の経費で守らなければならないのか」。2004年の米国防省資料によると、日本は条約上の義務を超えて米軍の費用を負担する「思いやり予算」を支出しており、日本の負担は既に在日米軍経費全体の74.5%、基地がある自治体への交付金などを含めると7000億円を優に超える額に達している。

本日の東京新聞朝刊に、ちょうど自分が考えていたことと全く同じ内容のコラムがあった。まとめるのも面倒なのでそのまま引用しておきたい。

 この要求は妥当なのか。元外務省国際情報局長の孫崎亨氏は「妥当かどうかを考える前に、日米安保体制を見直す、いい機会。トランプ氏はその主張を続けてほしい」と話す。
 「米国には『日本の安保ただ乗り論』という誤った認識もあるが、日本駐留は米国の世界戦略の一環。『それならお引き取りを』と言われて困るのは米国だろう」と指摘する。
 南沙諸島で中国が存在感を増しているが、日本から米軍が撤退しても東アジアの力関係は崩れないか。
 孫崎氏は「南沙で日本は当事国ではなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)が主体的に取り組むべき問題だ」と解説。その上で「尖閣諸島は、国交正常化したときに日中両国は領有権の棚上げで合意した。それに戻ればいい。北朝鮮は日本が攻める意思さえ示さなければ、問題は起こらない」と推測する。
 安保問題に詳しい前泊博盛・沖縄国際大学教授も「米国に過度に依存している日本の安保や外交を議論するよい機会になる」とトランプ氏の主張を歓迎する。
 「日米安保条約をよく読めば、米国が必ずしも日本を守る必要はなく『片務』とはいえない。日米地位協定で米国が負担すべき経費を、実際には日本が肩代わりしている。現状の日本側の負担が妥当なのか、日米安保が本当に効果的なのかを考えるべきだ」
 ただ、トランプ氏の日本の核武装容認発言には「アジアを不安定化するだけで賛同しえない」と言う。
 とはいえ、「日米安保」といわれると思考停止に陥りがちな日本の事情を指摘しながら「トランプ氏が自分の頭で考えて、素朴な疑問を言葉にしていることは評価すべきだ。米大統領にふさわしい人物とは思わないが、見習うべきところはある」と語った。

高崎〜江戸川CR

先日、輪行袋の使い方を習ったので、ロードバイクでの初の輪行にチャレンジした。上尾武道館に野暮用があったので、春日部から上尾まで自走し、用事を済ませた後、上尾駅の駅前の迷惑にならないスペースで輪行袋に収めた。

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熊谷か深谷あたりに行こうと思っていたのだが、これから忙しくなるので、折角のチャンスだと高崎までの切符を購入した。気軽な気持ちで高崎までと決めたものの、埼玉を越えてからも電車に乗っている時間があまりに長いので、途中で降りようか迷っているうちに高崎駅に着いた。休む間も無く、駅から烏川方面に向かった。高崎城跡に立ち寄った。

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国道を走るのはつまらない、烏川沿いを下って行けばすぐにでも利根川に出られるだろう、という安易な気持ちで地図も見ずにひたすら勘を頼りにペダルを漕ぎづつけた。しかし、それが失敗の原因であった。高崎商科大学グランド脇からサイクリングコースらしき道に入っていったのだが、群馬県と埼玉県の県境を流れる神流川を越える橋が分からなくなり、2時間ちかく新幹線の高架橋の下やゴルフ場をうろうろとする羽目になった。

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結局、どこかの県道から埼玉に入リ、国道17号を横切って坂東大橋から利根川サイクリングコースに入った。すでに時刻は3時を回っており、景色を楽しむ心の余裕もなかった。

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途中、「荻野吟子生誕の地」というところに立ち寄る。荻野さんは、旧妻沼町(現熊谷市)出身で、日本最初の女医になったことで知られ、郷土埼玉が誇る偉人の一人にも挙げられている。しかし、埼玉県は彼女の医者の開業試験願を却下しており、結局彼女は東京府で開業することになったのである。

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家までたどり着こうと頑張ったのだが、下着とズボンのズレのためか、お尻が痛くてどうしようもなくなってしまったので、南栗橋駅で自転車をまとめ、東武線で帰路に着いた。最初のロードでの輪行であったが、ウェアの点で反省が残ったものの、100キロを越える距離を走り、充実した一日となった。次は200キロに挑戦したい。

モンベル・コンパクトリンコウバッグ

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本日の夕方モンベルの前輪後輪とも外すタイプの輪行袋を購入した。
店長さんから簡単かつ傷の付かないやり方を教わったので、忘れないうちに自分用のポイントまとめておきたい。

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まずは自転車をひっくり返すのだが、その前にライトやサイクルコンピュータは外しておく。
そして、前輪と後輪を外す前にクイックリリースレバーを抜いておく。写真を見れば分かるが、2本のタイヤでホイールを挟む形になるので、レバーを付けたままにすると邪魔になってしまう。また、組み立てる際もホイールを嵌めてからリリースレバーを通した方が楽である。ただし、外したレバーは無くしやすいので注意。
モンベルのこのタイプは輪行袋を収める袋を裏返しにすることで、ライトやレバーをしまうことができる。工夫の凝らされた商品である。

また、ボトルケージは邪魔になるかと思ったが、2つともあった方がタイヤを固定しやすいとのこと。

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後輪はディレイラーを外側にして置き、まずは上から固定していく。写真のように、ペダルを水平にしてチェーンの間にベルトを通し、クランクとチェーンステーもろとも縛るようにすると、うまい具合にホイールに接触する部分がないまま締めることができる。

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チェーンで袋の内側が汚れやすいので、カバーを用意すると良い。同様にリヤスプロケットを保護するカバーもあった方が良い。ただしこちらは軍手でも代用できるとのこと。

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次に、ヘッドチューブの太い部分でタイヤを縛る。この時にタイヤが後ろに動かないか確認する。縛りが足りないとタイヤが動いてしまう。縛ったらハンドルをどちらかに切ってスポークの間を通す。左右は関係なく、通せる方で良い。

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次に、サドルの裏側の軸を使って固定する。固定したら、もう一度先ほどの2ヶ所のベルトを増し締めならぬ「増し縛り」する。最後に、必ず車体を揺らしてみて緩みがないか確認する。

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肩紐をボトムブラケットにかける。ダウンチューブとチェーンステーの2本を結べば十分である。
カバーをかけて、下紐を絞れば完成である。自分でもその後やってみたが、5分少々で収納することができた。

なお、このモンベルのリンコウブクロは袋ではなく、厳密に言えばカバーである。一時期、JR九州でカバーではけしからんということになったらしいが、関東ではお咎めなしとのこと。