日別アーカイブ: 2016年3月29日

『映画の中で出逢う「駅」』

臼井幸彦『映画の中で出逢う「駅」』(集英社新書 2006)をざっと読む。
京都大学大学院土木工学研究科を修了され、国鉄で駅舎の研究に携わってきた著者が、専門的見地から映画における出会いや別れの象徴ともなっている駅舎について丁寧に説明している労作である。日本だけでなく欧米映画の中に登場する駅舎についても丁寧に触れられており、著者の几帳面な性格が伺われる。ただ、新書という範疇を超えており、実際に読み通した人は少ないのではないか。
その中で、筆者の次の言葉が印象に残った。

 駅やその周辺の空間には人々の心を開放し、人間本来の感性を喚起して研ぎ澄ます不思議な雰囲気がある。駅に降り立って、時代を刻む古い駅舎に対峙すると、そこを拠点として発展してきた街と近代日本の歴史、そしてそのなかで生きてきた他ならぬ自分自身と向き合ったような感覚に襲割れる。