加藤諦三『大学で何を学ぶか:自分を発見するキャンパスライフ』(光文社カッパブックス 1979)を読む。
30年以上前の本であるが、大学に通う意味や学ぶことの意義、さらには卒業後の生きる目的が語られる。受験競争の激しさ故の自殺や三無主義といった当時の時代状況にも触れられ、昭和の昔話のようにも感じるところもあったが、概ね現代にも通じる若者論として読んだ。つい十数年前までは、就職活動は大学の4年生になってからであった。しかし、現在は大学2年生から準備を始め、3年生から本格的にスタートしてしまう。これでは、特に文系の学生は、大学における貴重な「無駄」な時間を堪能することができない。その結果、自分という人間について向き合わないまま社会に出てしまい、自分の価値や働く目的を見いだせない宙ぶらりんな社会人になってしまう。
筆者は、大学は小中高で培ってしまった「一定の価値観、悪く言えば偏見」が自分が自分らしい将来を歩む判断を曇らせてしまうと述べる。そして、大学時代の4年間にそうした偏見を払拭し、自分と対話することが大切だと述べる。
人間の価値観がかたよるということの恐ろしさを知ってほしい。
だからこそ、大学で、立ち止まって、いままでとはちがった動機にもとづいて行動してみることをすすめるのである。
本当の自分を見つけるために。