吉田修一『パークライフ』(文春文庫 2004)を読む。
第127回芥川賞を受賞した表題作『パークライフ』と「文學界」1999年8月号に掲載された『flowers』の2編が収録されている。『パークライフ』の方は、日比谷公園という都会のど真ん中の憩いの空間を舞台として、淡々と日常を送る私とふとした偶然で知り合ったスターバックスコーヒーが似合う女性との奇妙な交流が描かれる。
高校時代の淡い恋愛の回想シーンの文章が良かった。「潮騒はすぐにそこにあった」という表現がよい。
気がつけば、ひとりぼくだけがみんなの寝息を聞いていた。横でひかるも眠っていた。少しだけ口を開いてひかるの顔が、月明かりを浴びて青かった。潮騒はすぐそこにあった。