仕事を終えてから、今年初めて春日部のララガーデンの映画館へ出掛けた。
フランシス・フォード・コッポラ監督『ゴッドファーザー』(1972 米)をシネコン内の名画座スクリーンで観た。
家族と身内の義理人情を守るために、政治家や裁判官を籠絡し、非常な殺人をも手がけるイタリア出身の裏世界のファミリーを描く。殺人を決意したファミリーの息子の決意に燃えた目や、これから殺す相手に対して掛けるセリフなど、迫真の演技でぞくぞくするような興奮を覚えた。
月別アーカイブ: 2008年1月
『まる子だった』
さくらももこ『まる子だった』(集英社 1997)を読む。
著者さくらももこさんが「ちびまる子ちゃん」時代の小学校3・4年生頃を振り返る。読みやすい文章であり、実家近くの歯医者の待合室で一気に読んでしまった。
『ちびまる子ちゃん』と同様に、さくらももこワールドの面白さは、著者の自由な空想の世界と、周囲の固定観念や常識のギャップにある。著者は家でも外でも、学校の授業中でも常に、仔犬との朗らかな触れ合いやメルヘンなクリスマスパーティーなど夢溢れる空想を楽しんでいる。ノストラダムスの話を聞けば、地球を守るための方策を練ったり、級友との仲が噂になれば、噂が実現したときのクラスの雰囲気を危惧するなど、現実世界から突飛な予想へとふっと空想が飛躍していく。しかし、教師や母、父ヒロシなど周囲の大人は、そんな著者を「地方都市の清水住む平凡な小学生の女の子」という固定観念を通してしか見ない。「本当はこうなのに」「こうなったらどうする?」といった著者の内面の叫びが、突拍子もない行動やニヒルな笑いとなって表面化してくるのである。このエッセーを読むとそういった「背景」まで理解できるので大変面白い。
閑話休題、昨夏より、東京新聞の朝刊でちびまる子ちゃんの四コマ漫画が始まったのだが、これが不快なほど面白くない。
四コマ漫画のためか、上記の心の中の言葉は全て省かれてしまっていて、家族や級友を馬鹿にしたり、クールに振舞うだけのまる子ちゃんらが登場する。さくらももこさんの面白さは内面と外面のギャップ−自分が捉える〈自分〉と他者が見る〈自分〉とのギャップ−にあるのに、それが全て払拭されては、単にひねくれた小学生のやりとりになってしまう。シュルツの『スヌーピー』も同じだが、セリフの行間に流れる間を味わう必要があるのだ。
東京新聞を読みはじめて今年で9年になるが、早く連載が終わってほしいと願っているのは私だけでないはずだ。
『年収300万円時代を生き抜く経済学』
森永卓郎『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社 2003)を読む。
著者の森永氏はテレビ朝日などの番組によく出演するが、コメントする姿を画面でちらっと見る限りでは、オタクを礼賛し、にやにや笑顔を浮かべる単なるオジサンだと思っていた。また、本書もタイトルから想像するに年収の低い世帯に贈る節約術だと勘違いしていた。しかし、書かれた文章を読んでみて著者の経済分析の鋭さと論説の分かりやすさに驚いた。
執筆当時の〈小泉−竹中〉構造改革は、まず自由競争、市場主義経済のグローバルスタンダードの国際社会に参画していくために、デフレ構造の中で、徹底した不良債権処理や規制緩和、法人税・相続税の減税を実施した。その結果、海外の投資機関や一部の大企業などの一部の勝ち組が生じる一方で、日本国民の9割が年収300万円以下になってしまう経済構造に陥ってしまう過程を懇切に説く。
日本の中小企業を守りながら金融を再生させる方法は、土地担保主義の金融システムを復活させる以外に方法はないのであり、それは裏返して言うと、デフレが終結して土地担保主義の金融システムが機能回復をした瞬間に日本経済は劇的な回復をするということだ。それも半端でない勢いで回復していくこ とになるだろう。
『こんなFPが顧客をダメにする』
青野弘『こんなFPが顧客をダメにする』(セルバ出版 2004)を読む。
ここ最近注目を浴びているファイナンシャル・プランナーの資格の紹介に始まり、具体的事例を交え、ファイナンシャル・プランナーの仕事の醍醐味や難しさ、悩みを語る。これから格差社会の中、ますます富裕層は富む傾向にあり、そうした顧客をがっちり掴むと仕事もスパイラルに順調に伸びていく。しかし、日本ではまだまだファイナンシャル・プランナーという資格だけで食べていくことは難しい。それぞれの専門の母体(銀行業、生命保険、損害保険、税理士、司法書士など)や得意分野を生かしつつ、幅広い連携で活動すべきであるし、そうしたネットワークを持ったFPを選ぶべきだと説く。
後半はあまり興味が持てない内容だったので読み飛ばしてしまった。
著者青野弘氏が代表を務めるアルダ・ビジネスコンサルタンツ株式会社
『銀座ママが教える「できる男」「できない男」の見分け方』
ますいさくら『銀座ママが教える「できる男」「できない男」の見分け方』(PHP研究所 2001)を読む。
銀座で会員制クラブを経営する著者が、男性のファッションや身のこなし、また女性や後輩に掛ける何気ない一言から、仕事や家庭で成功し周囲から一目置かれる男とそうでない男に分類する。
著者のアドバイスによれば、男は表面だけを飾れば飾るほどボロが出てしまうので、ネクタイやメガネなどのさりげないおしゃれや清潔感を心がけた方が良いとのことである。無理した若作りではなく、少年のような一途さを忘れない若さこそが男性の魅力なのだそうだ。また、ホステスの女の子にもさりげないフォローをするなど、相手のことをまず第一に思いやる「レディーファースト」の気持ちから発した言葉掛けが大事だと述べる。
銀座で「もてる男」になるには、単に金だけでなく人間的な修羅場をくぐることが大切なのである。私にはまだまだ足りない部分であると反省する次第である。