夏の10冊目
東野圭吾『ゲームの名は誘拐』(光文社文庫 2005)を読む。
赤川次郎のように軽快な文体であり読みやすく、また、あっと驚く仕掛けも用意されており楽しく読むことができた。誘拐した被害者が逆に誘拐犯に協力する展開は、高校時代辺りに読んだ天藤真の『大誘拐』を彷彿させ、ワクワクドキドキだった。
月別アーカイブ: 2007年8月
『重力の達人:橋、トンネル、くらしと土木技術』
夏の11冊目
田中輝彦『重力の達人:橋、トンネル、くらしと土木技術』(岩波ジュニア新書 1998)を読む。
技術論に始まり、確認の実験、文明論、社会批評、果ては歴史文献や小説の引用まで話しが多岐に及び、少々読みにくい内容であるが、著者の土木技術にかける思いがその分だけ伝わってくる。
前半は重力の断面係数や膨張、慣性の法則といった基本的な物理の理論を紹介し、後半はそうした理論を応用した橋やダム、港などの土木技術の粋を分かりやすく解説する。そして、土木技術こそが文明社会を形成してきたし、これからも自然災害から都市を守るために、社会資本を投入し公共施設を建設する意義を熱く語る。
著者は執筆当時鹿島建設の社員であり、鹿島建設が受注した関西国際空港や明石海峡大橋、浜名大橋などに盛り込まれた技術が素晴らしいと自賛してしまうのはご愛嬌か。
パチンコエヴァ
『ゲームクリエータになるには』
夏の9冊目
西村翠『ゲームクリエータになるには』(ペリカン社 2000)を読む。
高校生によく読まれる同シリーズであるが、様々な職業を紹介するだけでなく、年収や将来性、また夢の実現に向けた進学先の情報まで分かりやすく教えてくれる良書である。
この本では、特にアーケードゲームや初期パソコンのピコピコゲームから、ファミコンを経てプレステ2の映画と見紛うような一大世界に至るまで、ゲームの発展に伴って業界も大きく様変わりした点に紙幅を費やしていた。昔は一人のクリエータがしこしこ画面に向かって作っていたが、現在では、分業や外注などチームワークで作り上げていく体制に変わり、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力が重んじられるようになった。また安定した雇用環境という確固たる地位を得た業界ではないので、5年後10年後に向けて常に勉強し、自己研鑽を深め、体力や生活習慣を疎かにせず、様々な制約があろうと自分の夢や目標を忘れないことの大切さを説く。クリエイティブで職人気質的な孤独な業種であろうと、社会人としての常識と熱意が問われるのである。
『夜光虫』
夏の8冊目
馳星周『夜光虫』(角川書店 1998)を読む。
台湾プロ野球を舞台にしたヤクザの八百長賭博に巻き込まれ、心の衝動に赴くまま殺人や暴力行為に手を染め、破滅していく元日本プロ野球の投手の姿を描く、長編サスペンスである。暴力とセックスという男の破壊衝動を極めてストレートに描きながら、家族愛や純愛を信じようとするハードボイルド的な要素もあり、かなり読みごたえのある分量であったが一気に読んでしまった。おそらく女性が読んでも不快感を抱くだけの作品であろう。