月別アーカイブ: 2004年3月

『新公文式算数の秘密:幼児・小学生でも方程式が解ける』

公文公『新公文式算数の秘密:幼児・小学生でも方程式が解ける』(くもん出版 1993)を読む。
現在では数字の練習から電磁気学や曲面上の幾何などの大学数学まで一貫して体系化された公文式であるが、最近,陰山氏の100マス計算法とともに今再び注目を浴びている。
この本では表題通り、小学校入学前ですでに高校数学を終わらせてしまう幼児や小学生をたくさん紹介している。半分は宣伝なので、眉に唾つけて読む必要があるが、数学の理解に年齢など関係なく、また計算数学で能力のあるものは読書量も豊富で何事にも興味関心を持つ傾向が強いという指摘は興味深い。確かに公文式は誰でも満点取れる教材から始め自信をつけさせ、自学自習を基本とした勉強スタイルを植え付けさせ、進度グラフなどによって常に達成感を与える仕組みになっている。学校教育における学年ごとに区切られ、「教える−教えられる」関係が固定化し、達成感を感じにくい画一化された一斉授業スタイルの欠陥を見事に補っている。

かくいう私も、小学校から中学にかけて公文式に通っていた。数学は記憶の限りでは確かKの100番くらいまで行ったのではなかろうか。部活が忙しく、また、logの計算辺りでやる気をなくしてしまい途中で止めてしまったのが残念である。そして国語は半年間くらいで現代文の分野は全て終えることが出来た。
現在数学1Aの問題集を10数年ぶりに復習しているが、大体全部で30時間くらいでおおまかな所は押さえられそうである。余弦定理と正弦定理の公式の理解に少し戸惑ったが、あとは問題文から計算式さえ組み立てることが出来れば造作ない。しかし高校時代はほとんどやる気がなかった数学であるが、この歳になって半ば趣味として数学を勉強するとなかなか楽しいものである。

『鳩山家の勉強法:五代全員東大現役合格の秘密』

通信勉強塾アテネ著・多湖輝監修『鳩山家の勉強法:五代全員東大現役合格の秘密』(ごま書房 1996)を読む。
鳩山一郎の父親である鳩山和夫氏から数えて五代目(由起夫氏の息子)まで鳩山家では五代全員が東大に入学しているという。鳩山家の教育方法や由起夫、邦夫氏の勉強法などを紹介し、野口悠紀夫氏の『超勉強法』やエビングハウスなどの忘却曲線などを援用することで、短時間で効率的な受験勉強法のノウハウをまとめている。以下に気になったポイントを列記する。3日間ほど昼夜逆転生活が続いたので頭の回転も鈍く、ぼーっとして、体がきつい。歳とともに徹夜がきかなくことを実感せざるを得ない。

  1. 高校2年生か3年生の始めに志望校の赤本を買い、傾向と対策をつかんでしまうことが大切。その際英語や古典だったら予め訳を読んでしまってから解いてみると良い。また数学で詰まったらすぐに解答を見てしまう。入試の答えをまず先に見てしまう「逆さま勉強法」が頭に入りやすく、その後の勉強でも入試の要点がつかみやすい。
  2. 勉強で右手が疲れたら左手や首を動かすとその反作用によって右手を動かす領域の働きが抑制されて疲労がとれやすい。
  3. 問題を解いたら、結果をなるべく早くフィードバックしてやることが大切。これを「即時確認の原理」という。マクファーソンという心理学者が行った実験によるもので、結果を知りながら作業を行う方が、結果を知らせずにやらせた場合よりも何倍も精度が高まるという効果がある。
  4. 覚えた後に十分な睡眠をとると、却って忘れにくい。眠ってしまうと記憶が遠ざかってしまうと思いがちであるが、ジェンキンスの実験によると、学習後眠らずにいると、8時間経つと急激に記憶が減少してしまうが、学習後すぐに眠った場合は、学習後二時間後までは記憶の減少が見られるが、その後は減少しないという結果が出たそうだ。
  5. 教育心理学では必ず勉強することだが、エビングハウスの実験から記憶したことは9時間以内に復習すると最も効果が上がる。
  6. テレビというのは情報量が人間が意識する以上に多いので、勉強の合間に見ると逆に疲労が蓄積する。
  7. 適度なノイズは集中力に効果がある。ただし邦楽など意味のある言葉を聞くと集中力は妨げられる。ゆったりとした音楽を適度な音量で聞くのが良い。
  8. ミスした答案を100点になるまで繰り返す。スポーツ選手が何度も正しいフォームを繰り返して身体に覚えさせるように、何度も繰り返すことが勉強でも大切。
  9. 「超勉強法」でも紹介されていたが、連想や語呂合わせはバカに出来ない。また歴史や地理は資料集を用いて歴史的人物の顔を覚えるとか、地図で確認する癖をつけると記憶は向上する。
  10. まとめてして、何事も全体から部分という順番で勉強する。本にアンダーラインを引く際も全体をとにかく一度読んでしまってから、もう一度読む際に引くと、重要事項の位置づけが出来るので良い。

『フーゾク儲けのからくり:欲望産業の原価がわかる本』

岩永文夫『フーゾク儲けのからくり:欲望産業の原価がわかる本』(ワニ文庫 2003)を読む。
フーゾク評論を手がけて20年になる著者の分析によれば、日本全国のセックス関連事業は年間3兆6000億円と莫大な額に及ぶという。出版業界が2兆円産業だからその2倍近い額が毎日消費されている計算だ。ソープランドやピンサロなどの「表」のフーゾクと、デートクラブや大人のパーティなどの「裏」のフーゾク、そして韓国マッサージやイメクラなどの「新」フーゾクなど多岐に渡るフーゾク産業を経営的な側面から分析している。法的な規制に加え、裏の世界との付き合いなど経営的にはおいしい話ばかりではない。フーゾクの経営者には男性顧客の秘密意識や開拓者精神をくすぐり続けるような機転の良さが求められる。どこの業界も同じである。

『第3の教育:突き抜けた才能は、ここから生まれる』

炭谷俊樹『第3の教育:突き抜けた才能は、ここから生まれる』(角川oneテーマ21 2000)を読む。
著者はデンマークの教育理念ともなっているイタリアの教育学者モンテッソーリの教育法に影響を受け、通常の学校教育とも、ただ子どもの自由に任せただけのフリースクールとも違う、「自分自身が何かを作り出す。自分自身が価値観とか哲学を持って、自分はこういうことを学びたいから、こういうカリキュラムでやりたい。あるいは、自分自身が社会参画することで社会は変えられると思える生き方ができる人を育てる」ことを目指した第3の教育を提言する。

「Oplysning」とはデンマーク語で「教育」を意味する言葉で基本的には「照らす」という意味である。そこから著者は、単に知識を学ぶとか、計算が出来るということではなく、自分の中に強い力、何か燃えるようなものがあって、それでお互いを照らし合うという「照育」を基本理念にしたラーンネットグローバルスクールという私塾を神戸に立ち上げ、新しいオルタナティブな教育実践してる。ホームページを見れば分かるが、このLGSのプログラムは、管理詰め込み教育でもなく、自主放任教育でもない、体験を重視した問題解決能力育成に特化した「自立・創造型」の人材育成モデルである。何やら慶応SFC的な宣伝文句が並ぶが、総合的な学習の時間、生きる力といった文科省の学習指導要領のパイロット校みたいな雰囲気である。このような学校がチャータースクールとして認可を受ければ日本の教育は根幹から変わっていかざるを得ないだろう。