日別アーカイブ: 2001年2月4日

『電脳社会の日本語』

加藤弘一『電脳社会の日本語』(文春新書)を読んだ。
JISコードやユニコード制定における漢字の扱いについて分かりやすく書かれていた。インターネット社会ではアルファベットが中心であり、漢字はグローバル通信には馴染まないものだという意見がある。確かに漢字は「高」や「辺」という字には異体字が多く、どこで区切りをつけて分類するのか、特に人名漢字はその人のアイデンティティーに関わるために容易に解決できないだろう。しかし漢字は文字の形が一定しており表示と編集の違いを意識しなくて済む。漢字の処理が難しいといっても、量の問題に過ぎない。しかしアラビア語やチベット語の文字は前後との組み合わせによって字形が変化するので、現在の技術ではデジタル化できないというのだ。マックも来月からOSが根本から変わり、ユニコードとOpenTypeを基本とするようになるが、日本語環境には慎重を期して欲しい。

『クルマ・20世紀のトップランナー』

星野芳郎『クルマ・20世紀のトップランナー』(岩波ジュニア新書 1986)を読んだ。
20世紀はまさにクルマの時代であったと改めて思う。帝京大学教授の降旗節男氏は戦後の日本のマスコミ・教育・政治・行政のすべてがクルマのためであったと述べていたことを思いだした。降旗氏の言を借りるならば、日本の戦後教育はクルマを購入することができる中間所得層の拡大のためにあり、テレビ、新聞、ラジオはクルマのCMを流すことが主目的で、番組はクルマのCMの間を埋めるものだと言える。また高度経済成長はクルマを走らせるための国道・高速道路への公共投資が柱であり、それを監督する運輸省・建設省を牛耳った自民党が55年体制を支配し続けたのだ。バブル以降情報通信分野への公共投資が叫ばれているが、クルマを走らせるためだけに国造りを行ってきた戦後の総括が必要であろう。