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「共謀罪」に対する闘いの意味するもの

以下、「経産省前テント広場」のメーリングリストより転載

◎4月7日(金)「共謀罪」に対する闘いの意味するもの

 村上春樹の『騎士団長殺し』には1930年代の暗い事件が登場する。この小説にとってこの事件の登場が何を意味するかを論じるのは難しいのだが、とても印象深いところだ。一つはドイツ(ヒトラー)によるオーストリア併合に絡んだナチ高官殺害事件である。これには「騎士団長殺し」という絵の作者である雨田具彦が、若い日のオーストリア留学時に関係する。彼は、オーストリア人の恋人と共にこの事件連座し、ドイツの秘密警察に逮捕され、強制送還される。もう一つ、弟の雨田継彦が1937年の南京虐殺事件に参加し、後に自殺する件である。1930年代の暗い二つの事件を何故に村上春樹は、この作品に登場させたのか。この作品を読みながら思いめぐらしたが、昨今の状況があの不安な1930年代に似ていることへの危機感と、それに対する村上のメッセージのように思えた。

 「戦争のできる國」へと国家が舵を切ったことは、今や多くのひとが感受するところだが、それは国家権力による自由や民主主義(国民の自由や発言や行動)の制限や抑圧と関係している。これは最終的には、憲法の改正(権力を縛る憲法の改定)になるのだろうが、実質的に、それをあらわす法案が出てくる。憲法解釈の変更や安保法案(戦争法案)であり、特定秘密保護法案である。そして、今、「共謀罪」法案が国会に上程されている。1930年代を想起させる国家権力の動きがみられるのだ。戦争のみならず、国家権力の所業を経験した人たちが、危機感を持って当時のことを語る、それをよく目にする。戦中派(戦争経験のある人)の人々の書き遺しである。作詞家であるなかにし礼は『夜の歌』で満州国から引き揚げを含めた自己の生涯を込めた作品を書いている。これは一例だが、多くの人が歴史的証言として、それを遺している。

 「共謀罪」法案、この法案の趣旨は明瞭ではない。その目的にとってつけたように、テロ防止を付け加えているのは、そのことを示している。テロやその防止について政府は明確な(国民が納得できる)説明をしたことは、これまで一度もない。反テロ戦争に加担してアフガニスタンやイラクに自衛隊を派遣したが、その総括もない。反テロ戦争とは何だったのかの説明をしたこともない。テロといえば、誰もが反対できない。反対するのは難しいから黙っている。テロが、なにをさし、どのように起こるのかの説明はできていないのだ。オリンピックを掲げるが、それとテロとの関係など、何一つ明らかにしていない。

 政府筋にとって、ことは明確なのだ。戦争と国家権力強化(自由、民主主義、国民主権の制限や抑圧)なのだ。僕らは、戦争と、自由や民主主義の抑圧の歴史を、フランス革命の時代から見ている。1930年代のファシズム(全体主義)は、それが極端にあわわれたが、連合国(ファシズムに対抗した国家連合)の側にも、程度は違うが、同じことが存在したことはいうまでもない。この国家権力の再編と強化が実質的に進められるのは、官僚機構(法務省・軍・警察等の統治系の機構)においてである。今、「共謀罪」法案を通そうとする政治家たちは、それが機能しはじめるころにはいないだろう。「共謀罪」法案が良くなかったと、後で悔やむ人が多いのかも知れない。

 昨日は日比谷公園で「共謀罪」に反対する集会に多くの人が集まった。この動きは今後、より大きな声となっていくだろう。「共謀罪」法案は多くの人が指摘するように「治安維持法」を想起させる。「治安維持法」ができたのは大正15年(1925年)である。1920年代は、もちろん、1930年代、とりわけ15年戦争と呼ばれている中国大陸での戦争が激化し始めたのころに、この法律が強く機能した。これを制定した時代の内閣は、拡大適用に警戒的であったと語られるが、こんなことは、ちっとも作用しなかった。今、政府の説明も同じである。少しでも通りのいい言葉で飾るだけである。何故だろうか。

 ここには、近代の日本で法(憲法)がどのようなものとしてあったのか歴史がある。法(とりわけ憲法)は、国家権力の権力行使を制限するものであり、それを抑制するものであると語られる。これは国民主権の意味であり、これが普通の憲法の常識である。日本では、これは憲法の条文の中には存在しても、現実には存在しなかったことである。日本は明治維新を経て憲政国家になったというが、日本では憲法が国家の根本法になったのではない。広辞苑にはそう規定されている。だが、そうではない。国民の意識(意志)が権力の専制的恣意的行為(暴走)を制限し、縛るものとして、憲法が存在しなかった。憲法は、国家支配権力の統治のための道具であった。アジア法治思想(法家の思想)に基づく法思想(法についての考え)が支配的であり、憲法もそのように扱われてきたのだ。

 かつて、三島由紀夫は「治安維持法」は不敬罪にあたると批判した。彼は天皇制の擁護者であり、体制擁護派と目されていたのに「治安維持法」を、このように批判した。これは「治安維持法」が「大日本帝国憲法」に違反していたというように読める。でも、「治安維持法」が「大日本帝国憲法」と矛盾するものであるという指摘はなされなかった。これは「大日本帝国憲法」が普通の意味の憲法の条件(存在の意味)満たしてはいなかったことであり、憲法という言葉の書かれた法の体系(憲法法律)はあったにしても、憲法(憲法を憲法にする精神としての憲法、あるいは思想としての憲法)は存在しなかったことを意味した。

 戦後憲法は「治安維持法」の存続を否定したが、憲法を憲法たらしめた結果であったかといえば、そこには疑問が残る。憲法についての認識が、戦前の憲法の反省に立って一変したか、というと疑問があるからだ。日本帝国憲法の改正としての日本国憲法の成立には、憲法についての認識の革命(国民主権への憲法観の転換)が起きたとは考えられないからだ。確かに、戦後憲法の前文には、国民主権のことは書かれているにしても、支配層も含めて憲法観の転換が起きたとは思えないのだ。国民主権は憲法の前文という条文のなかに存在するだけだ。

 僕らは、政府や官僚層の憲法観(国家権力の統治の道具としての憲法)に危惧し、不安を抱いてきた。そういう法観伝統(法律は、国民を支配する道具として存在するという伝統)があることに不安をもってきた。そういう憲法観においては、憲法は、国家権力(政府や官僚)の暴走を歯止めするものではない。戦前にはそこに上乗りするように「治安維持法」があったのだが、現在は、そこに憲法違反ともいうべき治安維持法に匹敵する「共謀罪」法案が出てきている。だから、問題は二重なのだ。憲法に違反するような法案がでてきていること、それにもう一つ、権力の超権力的所業(専制的・抑圧的振舞い)を歯止めする憲法観がないことである。ここに共謀罪提出に対する本当の不安と危惧がある。

 人々の自由を侵犯する「共謀罪」法案を、法として認めないのは当然だが、これへの異議申し立ての中で、僕らは日本の憲法観を変えていくこと、それが同時に必要なことを自覚しなければならない。立憲主義の擁護というのは、それを表す言葉である。「治安維持」(テロ防止)に名を借りた抑圧法としての「共謀罪」法案に反対する。同時に、この闘いが、憲法観を創り出す、自由と民主主義を存在させる革命的な運動でもあることを自覚しなければならない。自由と民主主義など日本にはない。憲法観がないように。それらは僕らの意識や現存感覚にあるだけで、それは現在から未来に向かって創りだされていくものなのだ。

 憲法違反の共謀罪を葬ると同時に、真の憲法観を創り出していくことを意識していなければならない。憲法にまつわる運動や闘いが抱える複雑な日本事情だが、ここを自覚していなければならない。共謀罪法案対する闘いは二重の意味で憲法をめぐる闘いである。一般的な意味での自由や民主主義の抑圧法である共謀罪法案はその法案を葬ることで憲法を守るたたかいだが、その過程で憲法観を創り出すことであるという意味での憲法のための闘いである。自由と民主主義を生み出して行く、つまりは憲法観を生み出して行く闘いでもあるのだ。これは「共謀罪」法案に反対する運動に内包される希望だが、この希望は自覚されてあることで、はじめて生きるものだ。
(三上治)

4・6共謀罪審議入り抗議!国会前行動

話し合うことが罪になる 共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会

■とき  4月6日(木)18時30分~19時30分 
■ところ 日比谷公園野外音楽堂
     (東京都千代田区日比谷公園1-3)
     http://hibiya-kokaido.com/access%20map0802.pdf
○開会の挨拶 海渡雄一さん(共謀罪NO!実行委員会)
○ 政党挨拶 有田芳生さん(民進党、参議院議員)、田村智子さん(共産党 参議院議員)
 福島瑞穂さん(社民党 参議院議員) 自由党 沖縄の風
○ 発言
 高山佳奈子さん(京都大学教授・刑法)
 吉岡 忍さん(ノンフィクション作家/日本ペンクラブ専務理事)   
 青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)    
 佐藤 学さん(安全保障関連法に反対する学者の会)   
 山口二郎さん(立憲デモクラシーの会)  
○ 行動提起 福山真劫さん(総がかり行動実行委員会)     
■ デモ 国会請願(19時40分~)
■ 共催 共謀罪NO!実行委員会 
  戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
◆連絡先 共謀罪NO!実行委員会
・「秘密保護法廃止」へ!実行委員会(新聞労連 jnpwu@mxk.mesh.ne.jp/平和フォーラム 03-5289-8222) 
・解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(憲法会議03-3261-9007/許すな!憲法改悪・市民連絡会03-3221-4668)
・日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)  mic-un@union-net.or.jp
・共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会(日本民主法律家協会 03-5367-5430)
・盗聴法廃止ネットワーク(日本国民救援会 03-5842-5842) 
◆連絡先 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
・1000人委員会 03‐3526-2920
・憲法9条を壊すな!実行委員会 03‐3221-4668
・憲法共同センター 03‐5842-5611

◎プレ企画(18時10分~18時25分)
 歌:「なりぞう」さん(都内各所の街頭宣伝などで活躍)

テロ対策はウソ、話しあうことが罪に!!
政府はテロ対策の名のもとに、三度廃案になった共謀罪を名前だけをかえて制定しようとしています。共謀罪は、人が法律に違反することを話し合い「合意」しただけで、実際に行動をおこさなくとも、犯罪とする思想・意見・言論取り締まり法です。憲法違反の共謀罪の制定を許してはなりません。

普通の市民団体や組合が組織的犯罪集団に!!
政府・法務省は、共謀罪はテロリスト集団や組織的犯罪集団が対象であり、普通の団体には適用されないといっていますが、これはウソです。法案には組織的犯罪集団とはどういう集団なのかなどの規定はありません。市民団体、組合、会社などの団体のメンバーが一度共謀したと判断されればその団体は組織的犯罪集団とされます。共謀罪は思想・意見・言論を処罰し、結社=団体を規制する、現代の治安維持法です。絶対につくらせてはなりません。

「教育勅語」容認の閣議決定に対する抗議声明

「教育勅語」容認の閣議決定に対する抗議声明

2017年4月5日
埼玉教職員組合
中央執行委員長 金子 彰
埼玉高等学校教職員組合
中央執行委員長 嶋田 和彦

 3月31日、安倍内閣は民進党初鹿明博衆議院議員の質問主意書に対して、教育勅語は「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定した。また、4月3日には菅義偉官房長官が「道徳の教材として、教育勅語を使用することを否定しない」との見を示した。この一連の動きは、戦後日本の歩みを否定するものであり、断じて認めることはできない。私たちは、閣議決定に強く抗議し撤回を求めるとともに、菅官房長官の憲法違反の見解に抗議する。

 いうまでもなく教育勅語は、1948年に日本国憲法や教育基本法に反するとして、軍人勅諭とともに、衆議院で排除が決議され、参議院で失効確認の決議が行われている。つまり、教育勅語は戦後教育とは相容れないものとして否定されたのである。今回の閣議決定は、この決議との整合性がとれず、憲法違反であることは明らかである。

 「朕惟フ二」ではじまり「朕カ忠良ナル臣民タル」と呼びかける教育勅語は、主権在民の日本国憲法とは異なる、主権在君に基づく大日本帝国憲法下のものである。また、「爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭檢己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ」との部分を指し、「教育勅語の内容は現在でも通用する」との主張が与党議員から発せられている。3月8日の参議院予算委員会で、稲田防衛大臣も「教育勅語の精神である道義国家をめざすべきであること、そして親孝行だとか友だちを大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持しているところだ」と発言した。しかし、教育勅語の本質は、これらの徳目を実行し、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スへシ」とあるように、「いざという時には一身を捧げて皇室国家のために尽くせ」と国民に求めることにある。

 そのことを意図的に隠し、「教育勅語によいところもある」と主張する稲田防衛大臣の国会答弁は、憲法擁護義務を負う国会議員として、ましてや現職閣僚として断じて許されるものではない。残念ながら与党の国会議員のこれまでの様々な発言や、日本国憲法を「ぶざまな憲法」と悪し様に否定しようとする安倍首相の姿勢を見ると、今回の閣議決定は、憲法を改悪して大日本帝国憲法下にこの国を戻そうとする動きの一環であると受け止めざるをえない。

 教育勅語を歴史として教えるならば、「戦後確定した日本国憲法と教育基本法とは相容れず、民主主義を否定するものであるため教育勅語を国会の総意で排除し失効させた」と教えるべきであり、個々の徳目を評価するような指導は行うべきではない。

 次期学習指導要領では、中学校体育の「武道」に「銃剣道」が導入された。銃剣道は明治時代にフランスの軍隊に学び、旧日本軍の戦闘訓練に取り入れられたものである。なぜ、いま戦場での戦闘を想定した軍隊の訓練を、中学生の学習に取り入れる必要があるのか大きな疑問を感じざるをえない。小学校道徳教科書でも「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられるという事態を見ると、「戦後レジームからの脱却」を目指す安倍首相の姿勢が色濃く反映しているものと感じられる。

 以上のように、教育勅語は日本国憲法とは相容れないものである。塚本幼稚園のように、教育勅語を唱和し、軍歌を歌うような教育は否定されなければならないものである。しかし、それを安倍首相夫人や政治家たちは評価してきた。この責任は重大である。このような状況のもとで行われた安倍内閣の閣議決定は、戦後教育を否定し、日本国憲法否定へと続く道に国民を引きずり込もうとする政治的意図を持ったものである。

 教育は国民すべてに関わる重要な営みである。それを自らの政治的意図をもってねじ曲げようとする行為は断じて認められない。教育勅語が21世紀を生きる子どもたちにふさわしい教材とは言えないことは明白である。このような閣議決定や管官房長官の発言を私たちは断じて認めることはできない。重ねて撤回を求めるものである。

以上

「戦後72年アジアとともに」パネル展

以下、メーリングリストより

「戦後72年アジアとともに」第4回パネル展
●2017.3.24(金)-26(日)  10:00‐18:00  浦和コミュニテイセンター9階展示コーナー(浦和駅東口パルコ階上)

「戦後72年アジアとともに」第4回パネル展

主催:戦後72年パネル展実行委員会 048-686-7398

3.25(土)18:30 講演会「日本会議の動向について」菅野完(著書『日本会議の研究』)
3.26(日)14:00 講演会「何も伝えられていない沖縄の基地問題」藤本吉則

戦後72年 アジアと共にチラシ

共謀罪の通常国会上程阻止! 永久廃案を勝ち取るぞ!

以下、救援連絡センターのメーリングリストからの転載です。

 1月4日、安倍首相が遂に共謀罪の今国会上程を打ちあげ、菅官房長官が〝テロなどを含む組織犯罪を防ぐことは国民も望んでいる。一般の方々が対象となることはあり得ない〟などと記者会見し、自公で最終調整に入っている。法案の詳細は定かでないが、昨夏にリークしたのと変わらない「テロ等準備罪」であり、7月2日都議選を控えた公明党の顔を〝対象犯罪半減〟などで立て〝小さく産んで大きく育てる〟作戦である。質(法益侵害・行為刑法→予防・行為者刑法への大転換)を量(対象犯罪数など)の問題に切り縮め、一般共謀罪の4度目復活を強行しようとする策動を絶対に許すな!

国内に立法事実は何もない
 日本の殺人発生率は世界207位で、OECD諸国で〝治安〟良好のトップ争いをしている。また〝テロの脅威〟を騒ぎ動員した伊勢志摩サミットでは何も起きなかった。国際的組織犯罪条約を批准しなくても、条約調印以来16年、外務省・法務省・警察庁以外に誰も困っていない。逆に、裏金作りに励む組織犯罪集団だと論難された警察は、今も自白強要・証拠捏造など刑事司法の根幹を揺るがしている。腐敗しきった警察・検察にこれ以上、オールマイティの武器を与えるわけにはいかない。

とってつけた立法理由-国連条約批准とテロ対策のための嘘
 法制審以来、国内に立法事実がないことを認めざるをえない法務省・警察庁は今、共謀罪新設の理由として、①国連条約批准のため、②20年東京五輪成功に向けたテロ対策のため、の二つを押しだしている。しかしこれもまたデタラメだ。

①〝世界大の治安共同体〟構築を狙う危険な国連条約
 政府は国連条約批准が一八七カ国に増え、もはや日本が〝抜け穴〟になることは許されないという。しかし同条約は、警察庁が〝21世紀のグローバル・スタンダード〟とする国際的な治安条約に過ぎない。人権条約と違って、労働者民衆にとってどうしても批准しなければならないものではない。条約を批准していない日本が、その内実はともあれ〝世界一安全・安心な国〟だと誇ればいいだけだ。
 03年秋の国会審議は、極めて不十分なまま条約締結を承認した(社民党と川田悦子議員反対)。しかし締結承認は後の共謀罪論争で暴露された資料などに基づき再検討する必要がある。従来の政府説明の破綻や条約本文に反する対象犯罪半減は、締結承認そのものの見直しを要求するからだ。

②国連条約とテロ対策は関係がない
 共謀罪はもともと国際的にもテロ対策として提案されたものではない。条約第二条は、金銭的・物質的利益目的のマフィア・暴力団対策としている。国連初の総合的治安条約は、原理主義など思想的・宗教的利害に係る〝テロ集団〟を対象としていない。
 確かに今、米・仏・豪・露・中など世界各国は競うようにして〝テロ〟対策立法をエスカレートさせている。しかし対〝テロ〟戦争は泥沼への道であり〝安全も安心もない世界〟である。またG7の財務・法務・警察官僚が主導する金融活動作業部会がマネロン規制に留まらない「勧告」を連発し、組織犯罪対策からテロ対策に重心を移している。一四年制定のテロ指定・資産凍結法はその〝圧力〟の結果でもある。しかしこうした国際治安マフィアの暗躍・悪扇動を許してはならない。

③20年東京五輪成功のためは大嘘
 自公政権は、条約批准のためとして共謀罪を国会上程し、論破された経緯を踏まえて五輪〝テロ〟対策の厚化粧をした。しかし国威発揚のための五輪開催と〝テロ〟対策強化がなぜ結びつくのか? どの五輪開催国が刑法を全面改悪してまで備えたか? 既に日本政府は国連対テロ条約全てを批准し、過剰なまでに国内法化している。陸・海・空のサミット戒厳態勢に見るまでもなく、日本は既に過剰警備国家である。〝備えあれば憂いなし〟で、民衆の恐怖を煽って翼賛させ、異端排除社会を創ることは許されない。

なぜ今、共謀罪の四度目登場なのか?─〝使える共謀罪〟としての登場!
 秘密法・戦争法を強行制定した安倍政権は、トランプ登場など世界危機が一挙に深まる中で、南スーダン派兵、沖縄反基地闘争弾圧、明文改憲を進め、国家頂点からの労働運動・民衆運動絞殺や再包摂を推し進めている。現時点での共謀罪浮上は、戦争する国に見あった弾圧・治安管理の飛躍的強化を狙う支配階級にとっては、満を持しての登場と言ってよい。
 〝話し合っただけで罪にする〟共謀罪は、戦後治安法から国益を最優先する戦時刑法への転轍器であり、平時・戦時を貫くシームレスな非常事態型、全天候対応型の現代版の治安維持法である。それは近代刑法の法益侵害・行為処罰原則を破壊し、予防・行為者刑法への飛躍をもたらし、労働者民衆の思想・表現・結社の自由や団結権を更に大きく破壊する。
 共謀罪は単に新しい犯罪類型を創るだけではない。法案は密告を奨励しているが、併せてその捜査手法がなければ絵に書いた餅になる。06年時に共謀罪を制定しても、盗聴の対象が制約され、スパイ潜入など共謀罪捜査用の手法は十分に整えられていなかった。しかし16年通常国会の刑事訴訟法等改悪は、司法取引導入、一般犯罪に対象を拡大し自動盗聴を可能にする改悪盗聴法などの新捜査手法を検察・警察に与えた。警察庁は更に室内盗聴まで狙っている。共謀罪立法によって一挙に戦時型司法が実働化するのだ。戦争国家・治安管理国家化の全体像を暴露し、その結節点になる稀代の悪法を何としても永久に葬り去ろう。

戦争国家・治安国家・改憲に向かう濁流を共同の力で止めよう!
 今通常国会は、労働法改悪、日・米(英・豪)物品役務相互提供協定、天皇代替り法や憲法審査会本格始動など難題山積みであり、なかでも共謀罪は最大の対決法案になる。法務委員会は民法・商法大改正を審議中であり、共謀罪法案の審議時間が十分に取れる状況ではない。しかしあえて対決法案の共謀罪を国会上程するのは、反対論議が広がる前に短期間に強権で突破する、デマで野党や世論を籠絡できると妄想しているからだ。
 私たちは昨年新たに、反戦・反基地を闘う仲間と対〝テロ〟戦争反対を軸に共同して伊勢志摩サミット・南スーダン派兵・共謀罪に反対するデモや集会をかちとった。また日の丸・君が代強制や医療観察法に反対する仲間との改憲阻止に向けた討論を続けている。3月にはこの二つの流れが、それぞれの課題に固執しながら、課題を超えて戦争・治安・改憲NO!の総行動を行う。法務省・警察庁・厚労省・外務省・財務省・文科省など官僚中枢に怒りを叩きつけよう!
 〝本気で勝ちにいく〟ことを合言葉に、約20年に渡って組対法・共謀罪と対決してきた私たちにとって、文字通り正念場の春である。誰もが、巨大な濁流をどう止めうるか、のっぴきならない形で問われている。共に闘いぬきましょう。

・2月21日(火)国会行動 8時半~13時 衆議院第二議員会館前
・2月27日(月)共謀罪法案検討・討論会 18時~21時 佃区民館 月島駅下車 会場費500円
・3月4日(土)戦争・治安・改憲NO!共同集会 講演:纐纈厚さん(山口大名誉教授)18時~21時 文京区民センター3A会議室 会場費500円 戦争・治安・改憲NO!総行動実行委
・3月13日(月)戦争・治安・改憲NO!霞が関デモ 18時:日比谷公園霞門集合、18時半デモ出発~20時頃に日比谷公園解散 総行動実行委

2017年1月26日記
(石橋新一/破防法・組対法に反対する共同行動)

チラシ②チラシ②