『肩ごしの恋人』『だんだんあなたが遠くなる』

先週直木賞をとった唯川恵『肩ごしの恋人』(マガジンハウス)、『だんだんあなたが遠くなる』(大和書房)を読んだ。
「このまま30越えたらどうしよう」っていう不安と向き合う20代後半の女性の姿が印象的だった。20代後半という20代前半に比べて成長しているんだという自信と、ピークは過ぎたのかなっていう不安が交錯する微妙な年令の主人公が等身大で登場する物語である。トレンディドラマの小説化といったら身もふたもないが、晩婚化、仕事以外の生き甲斐探し、人材派遣等の労働力の流動化、家族関係の齟齬など現代日本の若者を巡る状況を踏まえて舞台設定がなされているので、自らの現在を考えながら読むことができる。しかし、15歳の崇君と27歳のるり子さんの場面は読んでて照れてしまった……。

るり子に抱きつかれたまま、崇はしばらくじっとしていた。るり子は焦れて、もっともっと身体を押しつける。やがて、ゆったりした口調で崇は言った「るり子さんは今、抱かれたいんじゃないと思うな。きっと抱きしめられたいんだ」

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