小林よしのり『ゴーマニズム宣言:差別論スペシャル』(解放出版社 1995)を読む。
全編同和問題についての漫画や対談で占められている。その中で著者小林氏は,部落解放同盟の代表との会談などを通じて,部落差別の実態を丁寧に描き,そして,自らの差別意識を明確に示した上で,同和問題の解決に向けた糸口を示している。
この当時の小林氏は,一漫画家として自分の立場を明らかにした上で,聖域無き表現の自由に挑んでおり共感が持てる。なぜこの頃のような挑戦者としてのスタイルを貫き通せなかったのだろうか。
『ジャパニーズ土人くん』を描いていいのかどうかという問題のちょうど逆のテーマもあります。例えば『裏天皇』というのを描きたいんです。熊沢天皇とかいたけど,そういう発想があるんですよ。『裏天皇』も描いていいのかどうか,これもその辺の問題を煮詰めていかないとやれないけど,これをやるとすごく面白いことが出てくるんですよ。ところがこれだって描けないでしょ。『ジャパニーズ土人くん』も描けなければ『裏天皇』だってやれないだろうという,この情況をなんとかせんといかんから,今『ゴー宣』をやってるんだってことですよね。