「アフガン情勢悪化 EU 難民流入警戒」

本日の東京新聞朝刊に、米軍の撤退に伴いタリバンの攻勢が著しくなっているアフガニスタン情勢が報じられていた。テレビではあまり報じられていないが、パキスタンの西側にあるイスラム教国のアフガニスタンは、数年前のシリア内戦どころか、1960年代のベトナム戦争のような泥沼の様相を呈している。

少し歴史を振り返ってみたい。2001年9月に、アフガニスタンを根拠地にしていた国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビン・ラディンが、アメリカ同時多発テロを実行した。旅客機がビルに突っ込む映像を見たことがある人も多いと思う。翌10月から、米軍はアフガニスタンに猛攻撃をかけ、アルカイダだけでなく、当時のアフガニスタンのタリバン政府まで壊滅に追い込んでいった。

以降、米国が中心となってアフガニスタンにアメリカ型民主主義政権が樹立されることとなった。現在のガニ大統領は、米国の大学で学び、2002年当時のアフガニスタン=イスラム移行国で閣僚を務めている。日本も米国へのおべっかを示すため、親米政権に69億ドル(約7600億円)もの支援を行ってる。

しかし、それまでのイスラムを基盤とした神の教えに従う政治から、人間が人間を支配する民主主義に急激に移行したため、民衆の不満が燻り続けることになる。また、ほぼ壊滅に追い込まれたタリバンもいつの間にやら息を吹き返してくる。

米国はブッシュ大統領、オバマ大統領、トランプ大統領の3代にわたって、アフガニスタン政権を支えていが、莫大な軍隊の駐留費が掛かる上、アフガニスタンには資源も産業もないため、仮に和平が実現しても米国に何のメリットも齎(もたら)さない。米国の損得に聡いトランプ大統領時代に、アフガニスタンの駐留米軍の撤退が決定することとなった。

また、ここでも授業中に何度も触れた中国の話が出てくる。中国は「一帯一路経済圏構想」の実現に向け、インド洋への足掛かりを作るために、ミャンマーの軍事政権を支援しているとのこと。同じベクトルの話で、インド洋への別ルートとして、中国にとってアフガニスタンやイラン、パキスタンは地政学的に重要な位置にある。習近平政権にとって、この地域に親中政権を作ることが、インド洋支配の重要な要石となる。

今年に入って、中国とロシアの両国が、陰日向にタリバン政権の支援に回っているとの報道がある。ミャンマーの軍事政権との類似性を見ていくことが大切である。9月の授業から西アジアに入っていくが、授業の中でどこまでアフガニスタン情勢の説明ができるだろうか。皆さんが興味を持ってもらえるような授業展開に努めたい。