木村正人『木村正人』(新潮新書 2013)をパラパラと読む。
ギリシア危機に端を発したEU内部の軋みを丁寧に追っている。多文化主義と関税なき単一市場の拡大を意図したEUであるが,ドイツとフランスの覇権争いが足を引っ張り,さらに難民流入やイスラム原理主義者によるテロ攻撃,ロシアマネーなどに翻弄され,各国で反EU・排外主義を掲げる急進右翼に悩まされ,にっちもさっちもいかなくなってしまったEUの実態について述べる。政治ネタばかりで肝心のヨーロッパで暮らす人々の生活や文化は見えてこなかったが,2013年段階でイギリスのEU離脱「BREXIT」を予期していたのは慧眼である。