齋藤孝『呼吸入門』(角川書店 2003)を読む。
ちょうど呼吸の仕方について悩んでおり、古来より日本人が重んじてきた呼吸の意味や正しい呼吸の具体的な方法など大変参考になった。
齋藤氏は、身体全体をリラックスさせ、横隔膜を下げた状態のまま、臍下丹田を意識し「3秒吸って、2秒溜めて、15秒で吐く」という「呼吸の型」を提唱する。特に息を吸うことよりも、ゆっくりと吐くことの大切さを説く。そして、呼吸を整えることで、気持ちをコントロールしたり、自己を客観的に見つめ直したり、相手とのコミュニケーションの間を図ったりすることができると述べる。
孫引きになってしまうのだが、教育と呼吸について語る章の中で、大正新教育のリーダーで、今の総合教育の基を作った木下竹次氏の教育論が大変印象に残った。息を吐きながら噛み締めつつ引用してみたい。
人は自由を欲するとともに束縛を欲する……思うに自由と束縛とは相対的なもので絶対に束縛もなければ自由もないはずである。鳥も空気の抵抗がなくては飛ばれない。釘も木片の反対がなくては聞かない。……束縛は自由を激成し束縛打破は自由行動者の愉快とするところである。自由行動がその束縛そのものに感謝することのすくないのは遺憾である。これを要するに縛解一如でなくてはならぬ。帯は身体を束縛する。しかし帯がなくては腹力がなくて活動自在にならぬことがある。縛即解・解即縛・学習もこの境涯に達しなくてはならぬ。(『学習言論』明治書院)