自己責任論

本日の東京新聞朝刊コラムに、イスラム過激派「イスラム国」とみられるグループに邦人2人が人質に取られた事件で、「自己責任」という批判が国内から上がっている背景について取り上げられていた。記事によると、ネット上には「自分で勝手に行って迷惑をかけてる」「自己責任でいいんじゃないの。戦場なんだから」という書き込みが相次いでいるそうだ。

こうした主張について、北海学園大の本田宏教授は「被害者側に落ち度はある。だが、それとは無関係に、国家には国民を救う義務がある。本来、守られるべき国民の側から『自己責任』と突き放すのは、はなはだおかしい」と首をひねる。

日本弁護士会連合の会長を務めた宇都宮健児弁護士は「Franceでは風刺画が原因のテロ事件後、大統領が反テロの大行進に参加した。殺人は最大の人権侵害と認識されているからだ。日本では個人の人権より、国家が先に来る。戦前の全体主義的な考え方から抜け切れていないから、巻き起こる」と苦言を呈している。

また、昨年、「自己責任論の嘘」を出版した宇都宮弁護士は、多重債務問題と合わせて「『高金利を知ってて借りた。自己責任だ』と多重債務者は責められるが、実は本人が一番責任を感じている。生活保護バッシングも似ている。人質事件の被害者も責任を感じているはずで、彼らを責めることは弱い者いじめでしかない」「非正規雇用による貧困問題も、無責任な政治家による制度の欠陥の放置による要因が大きい。それを覆い隠すには自己責任論が便利」と指摘する。

本田教授も宇都宮弁護士に同意し、「自己責任論は政府を無責任にする。結果として、問題が起きても政府は何もせず、『自分でどうにかしろ』ということ。新自由主義の台頭とも関係があるのだろう。国民の側から言いだすべき言葉ではない」と述べる。

この「自己責任」という言葉の扱いについては注意したい。今回のテロや多重債務、生活保護といった政治問題だけでなく、私もついつい相手に責任をなすりつける便利な言葉として多用してしまう。だが、その言葉の裏には、丁寧に責任をもって説明なり説得をしてこなかったこちらの側の瑕疵が含まれていることを忘れてはならない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください