智内威雄『ピアノ、その左手の響き:歴史をつなぐピアニストの挑戦』(太郎次郎社エディタス,2016)をパラパラと読む。
音楽家の母のもとで、音楽教室や音楽高校、音大と、恵まれた環境で音楽にどっぷりと浸かってきた著者が、留学先で右手が突然思い通りに動かせなくなる局所性ジストニアを発症し、左手だけで演奏するピアニストなるまでの経歴が描かれる。
左手だけのピアノ演奏というと、両手弾きからのアレンジのように思われるが、ギターの曲を左手に編集するケースが多いという。ギターの音を縦にあまり重ねない響きのつくり方や、一度にはじける音の数が最大でも5、6というのが、左手のピアノの共通しているとのこと。著者は次のように述べる。
左手のピアノ、片手演奏が、長い歴史をもつ鍵盤音楽の固定観念をとりはらい、ピアノという楽器とともに音楽の可能性を広げています。