第111回直木賞受賞作、海老沢泰久『帰郷』(1994 文藝春秋)を読む。
表題作の他、雑誌「オール讀物」に掲載された『静かな生活』『夏の終わりの風』『鳥は飛ぶ』『イヴニング・ライズ』『虚栗』の5編が収められている。メカニックとしてF1に挑戦した後の生活や仕事の空しさを描いた『帰郷』を含め、男との女の存在意義とイコールであるセックスに捉われてしまう大人の不倫や恋愛模様が描かれる。
『帰郷』
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第111回直木賞受賞作、海老沢泰久『帰郷』(1994 文藝春秋)を読む。
表題作の他、雑誌「オール讀物」に掲載された『静かな生活』『夏の終わりの風』『鳥は飛ぶ』『イヴニング・ライズ』『虚栗』の5編が収められている。メカニックとしてF1に挑戦した後の生活や仕事の空しさを描いた『帰郷』を含め、男との女の存在意義とイコールであるセックスに捉われてしまう大人の不倫や恋愛模様が描かれる。
大崎善生『孤独か、それに等しいもの』(角川書店 2004)を読む。
表題作の他、雑誌「野生時代」に掲載された、『八月の傾斜』『だらだらとこの坂道を下っていこう』『シンパシー』『ソウルゲージ』の4編が収められている。
双子の姉妹ゆえに妹をうしなった大きな孤独を抱えながら生きていこうとする姉の姿を描いた『孤独か〜』と、母の壮烈な死を乗り越えて母の見えない支配を脱しようとする娘の姿を描いた『ソウル〜』の2編が印象に残った。どちらも、現在のドラマと過去のドラマがクロスして展開される。社会の中で表面的には普通に生活していながら、孤独に苦しみ立ち往生をしてしまう。しかしその苦しみを自力で解決し、新しいステージに力強く歩み出していこうとする主人公の内面が丁寧に描かれていた。