随分前にハードディスクに録画してあった、若松節朗監督・渡辺謙主演『沈まぬ太陽』(2009 東宝)を観た。
その年の第33回日本アカデミー賞作品賞を受賞した映画である。「実在の人物や組織とは一切関係がない」フィクションとなってはいるが、1985年夏の日航機墜落事故に纏わる日本航空
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『大学で何を学ぶか』
加藤諦三『大学で何を学ぶか:自分を発見するキャンパスライフ』(光文社カッパブックス 1979)を読む。
30年以上前の本であるが、大学に通う意味や学ぶことの意義、さらには卒業後の生きる目的が語られる。受験競争の激しさ故の自殺や三無主義といった当時の時代状況にも触れられ、昭和の昔話のようにも感じるところもあったが、概ね現代にも通じる若者論として読んだ。つい十数年前までは、就職活動は大学の4年生になってからであった。しかし、現在は大学2年生から準備を始め、3年生から本格的にスタートしてしまう。これでは、特に文系の学生は、大学における貴重な「無駄」な時間を堪能することができない。その結果、自分という人間について向き合わないまま社会に出てしまい、自分の価値や働く目的を見いだせない宙ぶらりんな社会人になってしまう。
筆者は、大学は小中高で培ってしまった「一定の価値観、悪く言えば偏見」が自分が自分らしい将来を歩む判断を曇らせてしまうと述べる。そして、大学時代の4年間にそうした偏見を払拭し、自分と対話することが大切だと述べる。
人間の価値観がかたよるということの恐ろしさを知ってほしい。
だからこそ、大学で、立ち止まって、いままでとはちがった動機にもとづいて行動してみることをすすめるのである。
本当の自分を見つけるために。
『おくりびと』
地上波で放映された、本木雅弘主演、滝田洋二郎監督『おくりびと』(2008 松竹)を観た。
5年前に映画館で観た作品であるが、内容はほどよく忘れており、良質な感動が再びよみがえってきた。公開後に日本アカデミー賞を総嘗めにし、さらには第81回アカデミー賞外国語映画賞も受賞した作品である。日本文化を代表する作品と評価してもよいであろう。
公開当時に気付いたのかどうか分からないが、生と死の大きな物語の中で生きる人間の確かな存在を感じた。生死の繰り返しという生命の大長編スペクタル比して、一人の人間は小さな小さなドラマを生きる役者でしかない。しかし、その故人が生きた証というものが、納棺師の手によって飾り立て包み込まれることで、残る家族や孫の心の中に受け継がれていく。
見終わった後、死に対して、そして生に対して、不遜にならず、謙虚な姿勢を忘れずにいたいという気持ちになった。
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