日別アーカイブ: 2012年12月26日

猪瀬直樹「言葉の力」

本日の東京新聞朝刊に、作家である猪瀬直樹都知事「言葉の力」についてのインタビュー記事が掲載されていた。オリンピックやエネルギー政策といった政治的課題ではなく、若者の言葉について訊ねるという、東京新聞社会部ならではの「にくい」企画である。

就任後、猪瀬都知事は庁内すべての局にツイッターのアカウント持つように指示を出したとのこと。140字という制限の中で文章を練ることで「5W1H」を踏まえた正確な表現が身に付くようにとの配慮である。石原前知事も猪瀬知事も役所特有の言葉やカタカナに染まっては市民感覚から離れていくとの危惧があるようだ。また、猪瀬知事は私立を含めた都内の高校全部に「ビブリオバトル」という書評合戦への参加を働きかけるそうだ。詳細については触れられていなかったが、本を読む、作者や時代について調べる、心理を考える、要点をまとめる、そして発表するという言葉の総合格闘技のようなイベントと想像する。猪瀬氏の政治的スタンスは好きではないが、彼の言葉に対する姿勢は大変共感できる。

話は異なるが、都知事の政策に「右にならえ」の上田埼玉県知事もいつ猿真似−ビブリオバトル埼玉大会−を始めるやもしれない。少し研究しておく必要がありそうだ。
猪瀬氏は若者のコミュ二ケーションについて次のように述べている。高校の国語教師として突き刺さるような指摘である。丁寧に引用してみたい。

本を読むことは聞くこと。ずっと集中して聞いていくと、本当にしゃべることができるようになる。若い人はすごく言葉の感度がいい。ただ、それが意識化されているかどうか。意識化するのが言葉。例えば、自分がなぜファッションを着ているか、意味を説明できるかが重要。自分とは何か、言葉でどこまで意識化したかということになる。 自分の長所はなかなか見つからないが、短所がすぐ見つかる。実は、短所は自分の個性なんです。それを言葉にしていく。短所を長所として認識していく過程が大事なのです。 そのためには、本を読まないといけない。シェークスピアにも源氏物語にも、過去の本にだいたいのことが書いてある。自分が新しく思い付いたことはそんなにない。そこで一つでも新しいことを付け加えられれば、自分が出来上がる。読みもしないで、初めから自分に何かあると思うのは幻想で、人の言葉でしゃべっているだけ。自分をつかまえるには、過去に使われた言葉を整理する必要がある。