月別アーカイブ: 2007年10月

生活保護基準の切り下げ

本日の東京新聞の朝刊の藤本由香里さんのコラムが関心を引いた。
厚生労働省は2008年度から生活保護費の給付の基本となる基準額(食費・光熱費などの最低生活費)の大幅な引き下げを検討しているそうだ。藤本さんは次のように述べる。

厚労省は「一般所得世帯の消費実態との均衡」を見直しの理由としてあげているが、この裏には「正社員並みに働いても所得水準が生活保護以下の層」いわゆる「ワーキングプア」の存在があるのは間違いない。つまり働いても保護水準以下なのなら、生活保護基準の方を切り下げてしまおう、というわけだ。しかし、これでは本末転倒だろう。なんとかしなければならないのは、「人を安く使い捨てる」ことを奨励してきた制度の方であり、生活保護基準の方ではないはずだ。(中略)弱者を切り捨てることで国は豊かにならない。今、別の再配分が求められている。

まさに正鵠を得た意見である。働いても働いても家族を安心して養うことのできない収入しかないのでは、労働者はストレスで身を滅ぼすであろう。やはり、日本の社会風土においては欧米以上の広範囲なセーフティネットの確立が求められる。また、雇用のあり方にもメスを入れたい。就職氷河期などで一定の年齢を超えた不定期雇用者や障害を抱えた者、育児や介護などでまとまった時間が取りにくい人たちにとって働きやすい環境を整えていくことが急務である。

『少年犯罪実名報道』

高山文彦『少年犯罪実名報道』(文春文庫 2002)を読む。
1998年1月に大阪府堺市でシンナー中毒の19歳の男性が5歳の幼稚園児を刺し殺し現行犯逮捕されたという事件が発生した。そしてその事件について新潮社が少年の実名が報道しという少年法と表現の自由という本質的な議論が展開された裁判を

少年法61条は「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と定めている。しかし、一方で憲法21条では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と表現の自由を認めている。また、日本新聞協会はこの少年法の解釈に例外規定を設けて、「社会的利益の擁護が少年保護より強く優先する場合は氏名、写真の掲載を認める」と定めている。

「日本語を母語としない子どもと保護者の高校進学ガイダンス」

本日仕事の関係で、埼玉県越谷市で開催された「日本語を母語としない子どもと保護者の高校進学ガイダンス」という進学ガイダンスに参加した。世界一難しいと巷間指摘される日本語のハードルに阻まれ、高校への進学、さらには大学進学、将来の夢すらも見据えることができない中学生に、入試や学校選びのアドバイスを行った。
日本への出稼ぎや国際結婚など様々な理由で日本へやって来る子どもはここ20年で確実に増えてきている。県教委の話によると、日本語が十分に使えない外国出身の生徒は各中学校に2〜3名、埼玉県全県で少なくとも数百人近くいるということだ。親や社会の一方的な都合で母国を離れざるを得なかった子どもに高校教育の場にチャレンジする適当な機会を設けることは、県として当然やるべき責務である。
確かに定時制高校や競争率1倍を切っている高校に入ることは、少子化の現在容易なことである。しかし、日本語のサポートや取り出し授業、その他の支援体制が組まれた学校は少ない。普通高校教育の現場においても、ますます多国籍化していく生徒の実態を踏まえ、「特別支援教育」的な考え方が必要になってくるであろう。

〈特別支援教育についての文科省の定義〉
「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。
平成19年4月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実していくこととなりました。

主催:財団法人 埼玉県国際交流協会
   埼玉県総合政策部国際課

『テロとの戦い 再考』

本日の東京新聞朝刊に姜尚中・東大教授の『テロとの戦い 再考』と題した小論が掲載されていた。
その中で姜尚中氏は「日本政府は日米同盟から世界をみるという旧来型の思考から抜け出せていない。現在の米国の対テロ戦略が行き詰まっているのは明らか。友人ならば、その場しのぎの対米追従ではなく、米国に異なる選択肢を示していくことが肝心なのでは」と疑問を呈する。
そして、「日米関係は重要であり続ける。でも、いま日本に求められているのは日米のみではなく、それに地域の他国関係を組み合わせられる思考だ。日米の片務的な関係を正す道もそこから見いだせるのではないか」と結論づける。姜尚中氏は話を政治に限って論じているが、米国に弱みを握られつつもおんぶに抱っこという状況は、政治も金融も軍事も全てに共通することだと思った。

久石譲ベストアルバム

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最近久石譲のベストアルバムを運転中に聴いている。
20年前のアニメ映画『アリオン』や『風の谷のナウシカ』から、15年前の北野武監督映画『あの夏一番静かな海』や大林宣彦監督『ふたり』のメインテーマ、ソロアルバムから『さくらが咲いたよ』などの曲が収録されており、つい自分自身の20年前、15年前の記憶と重ね合わせてしまう。高校を卒業して一人暮らしをしながら新聞を配っていた頃や、免許を取得したばかりで深夜ドライブに走り回っていた頃の光景が浮かんでは消えていく。特に『あの夏一番静かな海』は、朝刊を配り終わった日曜日の昼に、一人アパートでビデオを借りてきて14インチのテレビで観賞したのだ。当時住んでいた伊勢原や厚木の駅前の賑わいが懐かしい。たまにはふらりと自分の歩んできた足跡を辿ってみたいとも思う。車で高速をすっ飛ばせば3時間くらいで着く距離であるが、なかなか今の多忙な生活では実現は難しい。