仕事の関係で、京都、奈良へ旅行に出掛けた。
「暖冬、暖冬」と言われ続けた今冬であるが、雪の舞い散る中の散策であった。雪景色の金閣寺や夜のライトアップされた清水寺、横殴りの雪の中を突っ切って京都市内から天橋立に向かってレンタカーを駆るなどいささか破天荒な旅行であった。小式部内侍の「おほえ山いく野の道のとほければまだふみもみず天の橋立」の和歌で詠み込まれている京都市内から天橋立までの距離感を確かめてみたいと思った。クルマでとばしても2時間近くかかる道のりで、昔の人にとっては異国へ旅するようなものであったろう。そうした遥か彼方の景色までの旅程を31文字で表現してしまう作者の構成力は素晴らしい。
さて、股の間から見る天橋立は幻想的な光景にうっとりするというよりも、現実の自然の持つ力にただただ感嘆するだけであった。「天に向かって掛かる橋」といった安っぽい宣伝文句に騙されるのではなく、まさに月の引力が引き起こす波と、河が運び出す土砂とのぶつかり合いという、海と山の自然の大きさに素直に圧倒されればよいのである。