日別アーカイブ: 2003年9月15日

『高校中退』

小林剛『高校中退』(有斐閣新書1987)を読む。
主たる読者として高校教師を意識したのか、高校中退の現状分析から中退を巡る教員・生徒の論理、そして退学を防ぐための解決策を提示する。ここ近年大学進学も視野に入れたサポート校が増えてきて「退学する自由」がかなり保障されてきて、現在には通用しないなと思われる部分もかなりあった。著者は学校の雰囲気に合わないという安易な理由で転退学を肯定したり、また人生の落伍者といった烙印を押すように否定的に中退をとらえるのでもない。著者は次のように述べる。

中退問題に出くわして教師や親にとって大切なことは、中退しようと考えている生徒ないし子どもに対して、それを安易に認めるのでも、一方的に否定することでもなく、中退することをめぐって本人がどれだけ真剣に自分自身の中で苦しみ、闘っているかを見極めさせることです。
安易に中退に走って自己の現実から逃避しようとしている生徒ないしは子どもに対しては、とことんその生徒が自己のこれからの生き方を賭けて真剣に中退することを考えているか、自問しているかを確かめ、そうでなかった場合は、生徒をギリギリまで考えさせ自問自答させた上で、最後の選択を本人にまかせるべきだと思います。そうした上での選択であるならば、多少のつらさがあっても彼らはそこを越えて生きていくに違いないだろうと思います。ここに初めて、たくましくしたたかな人生が生まれてくるのです。

しかし、上記のような事は学校中退だけでなく、転職、また離婚といった人生での大きな決断を迫られる時に共通する心構えであろう。自分で選んだ学校だから、自分で選んだ職場だから、自分で選んだ相手だからこそ、その最終的な価値判断も自分に帰って来るのである。