寺田隆生『ザ・有名私立』(三一書房)を読む。
題名からすると、受験案内のマニュアルのような雰囲気だが、さすが(?)というべきか、三一書房だけに日本における私学教育全般への批判、公立教育への疑問がベースになっている。そして「ウパニシャッド」哲学の「輪廻転生」の教えから、子供は親の付属品ではなく、一人一人の人間が「梵我一如」を希求する魂を宿しているものであり、それゆえに「幸福である自分」を探すことが大切だと述べるのだ。その点の見解の一部を引用したい。
「情けはひとのためならず」という。(中略)ひとに情けをかけておけば、それがやがて、めぐりあって自分にもどってくる。情けをかけるのは、ひとのためではなく、じぶんのためなのだ、という意味である。だがこれでは、情けをかけるのはそのときはいやいやながら、いつか自分にもどってくる自分への利益を期待してがまんしてそうしようという、いかにも下心が露骨であろう。私はむしろ、一歩も二歩も踏み込んで、情けをかけるそのこと自体が波紋をひろげることだと解釈したい。情けはかけてあげるのではなくて、かけさせていただくのである。それを波紋を起こす石の形や種類と組み合わせれば、個性の発見と自分らしさへのこだわりが、いかにも大切なものかがわかる。