日別アーカイブ: 2000年8月7日

『何をいまさら』

ナンシー関『何をいまさら』(世界文化社 1993)を今読んでいる。
テレビという媒体は最近「日常」「普通」を追う傾向が見られるが、誰も「それ、自分の日常だ」というリアル感を感じていないという指摘は、良く耳にすることだが、改めてなるほどと思った。私も高校教員をやっているが、高校・大学の友人に話すと、「最近の高校生ってどう?」という質問を必ずと言って良いほど訊かれる。その質問者の頭の中にはテレビで面白おかしくとりあげられる「渋谷系高校生」がイメージされている。しかし一方で90年前後のバブル期に高校時代を送っていた団塊ジュニア世代の私たちも、当時の大学生や20代の社会人は高級車を乗り回し、ジュリアナで騒ぐものだというテレビからの映像を受け取っていた。
高校野球が過剰なまでにひた向きで、純粋な高校生像を作り出している一方で、バラエティー番組等で矮小化された高校生群像が一人歩きしてしまっているテレビのからくりを質問してくる相手に教えるのはそう容易いことではあるまい。

『遠い接近』

松本清張『遠い接近』(光文社)を読んだ。
戦前教育兵時代に受けたリンチを戦後に復讐するという代物であった。軍隊に不満を抱きつつも家族を抱えている軍人は、団体生活の中で、国家に奉仕するという方向性しか見えなくなってしまう現実がリアルに描かれていた。現在のサラリーマンも肩書きを背負ってスーツに身を包み、携帯電話と名刺とシステム手帳で武装しているのだが、現在の企業戦士との類似点がまざまざと想起された。