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『池上彰の学べるニュース』

池上彰+「そうだったのか! 池上彰の学べるニュース」スタッフ『池上彰の学べるニュース②』(海竜社,2010)を読む。
番組で取り上げられた郵政民営化、検察審査会、教科書改訂、中高一貫、核兵器削減、北朝鮮の核開発、デノミ、朝鮮半島、ギリシャ財政破綻、アメリカ経済復活の10のテーマが取り上げられている。10年以上前の本であるが、分かった気になっていたニュースが実は分かっていなかったということに気づくことができた。

検察審査会など名前は知っていたが、選挙権のある人から無作為に毎年7,300人も選ばれていることは知らなかった。検察のミスを防ぐためにあるのが検察審査会である。起訴すべきでない人を起訴した場合は、裁判所で無罪判決が下ることでチェック機能を果たす、しかし、起訴すべき人を起訴しない場合に、検察審査会がチェックを果たしているのだ。

原爆と水爆の違いについても理解できた。ウランには核分裂しやすいウラン235と核分裂しにくいウラン238の2種類がある。自然界にあるウランのほとんどは核分裂しにくいウラン238で、ウラン235はわずか0.7%しか存在しない。ウラン238の方が重いので、ウラン鉱石を粉末からガスにして、遠心分離機でぐるぐる回転させると、重いものが外側に、軽いものが中心にいく性質を利用して分離し、ガスから個体に戻してウラン235を作りだす。

原爆はウラン235を利用したものである。ウラン235は23kg以上集めると臨界量に達し、勝手に核分裂連鎖反応が起きて、莫大なエネルギーを放出する。広島型原爆は臨界量を超えるウランを合体させるだけの単純な仕組みである。

一方、長崎に投下された水爆の原料であるプルトニウムはウランよりずっと少ない量で、勝手に核分裂を始める。そのため、広島型のように半分に分けて合体させるのではなく、小分けにしておいて、いっぺんに1カ所に集めて爆発を起こすように設計しなくてはならない。このタイミングが0.1秒でもずれると大きな爆発が起きないのである。
ウラン型の原爆は実験不要であるが、プルトニウム型の水爆は実験が必要となる。現在世界で行われている核実験の多くはプルトニウム型である。

東京都立白鵬高等学校附属中学校の入試問題が掲載されていた。地理の問題でも活用できそうな問題だったので、載せておきたい。

『アインシュタインの就職願書』

木原武一『アインシュタインの就職願書』(新樹社,1991)をパラパラと読む。
著者が担当した『月刊リクルート』(1978年ごろから1983年)に掲載されたコラムの選り抜き集となっている。リクルート社が発行している雑誌なので、人材の選抜や能力開発、マンパワーの活用、職業の選抜などがテーマとなっている。

産業革命の頃に機械破壊運動を行なったラダイト運動が興味を引いた。ラダイトは秘密結社であり、銃やピストル、斧や槌なども使用して、各地の工場を木っ端微塵に破壊していった集団である。現在のイスラム原理主義のような団体で、機械打ち壊しというよりも、一種の市街戦を展開していった。特にランカシャーやヨークシャーなどの産業革命の中心地で、連日のように工場が襲撃された。

著者は項の最後で次のようにまとめている。特に最後の一節は、AIに仕事を奪われる現代社会を評しており、興味深い。

ラダイト運動はたしかに時代錯誤の運動にちがいなかったが、一方では、時代の波に乗りすぎた経営者にもいい反省の機会となった。暴動の再発を恐れた経営者は、機械の導入によって仕事を奪われた労働者のすべてに適当な職場をみつけることを決議しているのである。
ところで、ロボットが人間の仕事を奪うという見方は、19世紀のラダイトと同じ発想といっていいが、ロボットを工場から追い出すといった19世紀的なラダイト運動はもはや起こらないだろう。これから新たなラダイト運動が起こるとしたら、知識や情報の分野においてであろうと思われる。たとえば、自動翻訳機などが開発されたら、翻訳家や外国語の教師は飯の食い上げである。産業革命期の熟練手工業者にかわって、世紀末の知的労働者がラダイトになる可能性は大いにある。

『歌舞伎町裏街道』

久保博司『歌舞伎町裏街道』(幻冬社アウトロー文庫,2010)をパラパラと読む。
今はトー横と呼ばれているコマ劇前を中心とした歌舞伎町で暗躍する暴力団や中国マフィア、ぼったくりバー、コリアンタウン、地下カジノなどの実態にせまる。

出版の都合があったのだろうか、舞台は1997年の新宿であある。中国が大きく経済成長する前であり、まだ一人っ子政策が続いていた頃である。そのため、改革・開放政策にともなって、農村から都会に出稼ぎに来た「民工」のうち仕事にあぶれた者は「流氓」と呼ばれ、戸籍のない者も多く含まれていた。当時は円高だったので、香港マフィアによって日本に出稼ぎにくる流氓が跡を絶たなかった頃の話である。

ちなみに、中国マフィアは清朝に抵抗する漢民族の政治結社「三合会」の流れを汲むという。

『化石探検』

福田芳生『化石探検:Part.2鳥類からシーラカンスまで』(同文書院,1989)をパラパラと読む。
2分冊のうちの2分冊目で、約2億3000年前から始まる中世代、約6500万年前から始まる新生代の、昆虫や鳥類、恐竜、哺乳類、被子植物、猿人までの化石が紹介されている。一片の化石からその生き物がどのような物を食べ、どのような気候や環境に生きたのかを探るというのは面白い作業なのであろう。しかし、どうしても化石や生物に興味のない自分を発見してしまう。

7000年前に滅びたはずのシーラカンスがアフリカ大陸とマダガスカル島に挟まれたコモロ諸島で発見されたという話は、内田康夫の小説『シーラカンス殺人事件』で知っていたが、強烈な異臭を放つシーラカンスの死骸をタクシーで運ぼうとしたり、解剖したりする努力があったのである。

『歴史の古い都市群1』

夏休みの14冊目

藤岡謙二郎『歴史の古い都市群1:東京とその周辺の都市』(大明堂,1984)をパラパラと読む。
地理学の専門書で、分野としては歴史地理学の分野になるのであろう。執筆者も地理学だけでなく、歴史学の専門家も名前を連ねている。主に江戸時代以降の地形や鉄道や運河などの交通網の開発などから、東京、横浜だけでなく、鎌倉、府中、石岡、川越、銚子、関宿・境、水戸、前橋などの都市の発展が論じられている。

昭和の初期までは、水戸や前橋、高崎、行田、佐倉など、江戸時代の頃の城下町や宿場町が発展したが、高度経済成長以後、那珂湊や佐原、木更津、龍ヶ崎、桐生など、高速道路のインター近くやや鉄道の駅が増えてくる。

かつては隅田川で大学のボートレースが行われていたが、1960年代から隅田川の汚染がひどく、大学クルーの漕艇場は次々と戸田へ引っ越して行った。それが復活したのが、1978年の早慶対抗戦からであった。

現在はダウン・タウンというような意味で、「山の手・下町」とが対立的に考えられているが、江戸以来の「山の手」に対する「下町」は、千代田の城の下に広がっていた、誇り高き「城下」の町を指していったものであった。