地理」カテゴリーアーカイブ

「日本にミャンマー軍人『留学』」

本日の東京新聞朝刊に、昨年のクーデターで実権を握った軍政府の軍人を日本の防衛省が受け入れているとの記事が掲載されていた。

石橋通宏参院議員は「多くの人が虐殺される中でも受け入れるのであれば、いかなる理由か堂々と説明すべきだ」と強調する。防衛省での受け入れの是非をめぐっては、旧統一教会との関係が取り沙汰された岸信夫前防衛相が辞任したので、現防衛大臣が国会で説明すべきことである。

気になったのが、軍事ジャーナリストの前田哲男氏のコメントである。

中国との接近を阻むためにも、国軍とパイプを断ちたくない。人権問題を抱えるミャンマーと日本の関係を認めがたい米国も、中国包囲網形成のために許容している。

現在のミャンマー国軍政府の評価は、中国との関係で考えると途端に難しくなる。軍事政権だから批判するのは簡単である。では、中国政府とずぶずぶの関係になっていた前アウン・サン・スーチー政権はどう総括すべきなのか。

新聞を読んでいる限りの情報で判断すると、私はミャンマー軍政権は100%批判の対象ではないと考えている。日本がミャンマーとの関係を保つという思惑でミャンマー軍人を受け入れるのは必ずしも否定すべき話ではない。というのは、ノーベル平和賞受賞のアウン・サン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)の政権時代があまりに胡散臭いからだ。

ただし、決して現在の軍政権を肯定するわけではない。非道な行為は決して容認できない。では返す刀で前NLD政権はどうだったのか。中国共産党の一帯一路経済圏に加担し、イスラム系少数民族ロヒンギャの迫害では数千人が犠牲になったとも言われている。いずれにせよ少ない情報で白黒つけて判断するのは危険である。

「アフガン タリバン復権1年」

本日の東京新聞朝刊にタリバン政権が復権してから1年が経つアフガニスタンの情勢が伝えられていた。アフガニスタンで支援活動を続けるNPO法人「難民を助ける会」のバセルさんは「アフガニスタンは今、食料をはじめあらゆる必要物資を支援に頼っているが、支援は一時的で持続的ではない。人々に仕事の機会を与えてほしいと訴える。

外務省の統計でみると、アフガニスタンの一人あたりのGNIは530ドルと世界で一番貧しい国であり、2017年で失業率は11.2%となっている。2018年の統計によると、74億ドルの輸入に対し、輸出は9億ドルに過ぎず、内訳はドライフルーツ(35%)、薬草(15%)、果物(11%)、鉱物(11%)、野菜(8%)等となっている。資源に恵まれておらず、また内陸国なので中国や東南アジアで成功した輸出加工区のような工場誘致も難しい。そうした中で、バセルさんが訴える「持続的」な支援はどのようなものがあるのか。

2019年にアフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲医師は「緊急のアフガニスタンの問題は、政治や軍事問題ではない。パンと水の問題である」と語る。中村医師は40年以上にわたり、パキスタン・アフガニスタンで安全な水と農業用水の確保に向けた灌漑事業に取り組んできた人物である。

アフガニスタンでは降水量の統計が取られていないが、2000年頃から干ばつが度々発生するようになり、小麦や果物が大きな被害を受けている。中村医師は独学で土木を勉強し、アフガニスタンに用水路の建設を進め、65万人の命を救ったとも言われている。(まさに国葬に値する人物である)現在、国際NGO(NPO)団体ペシャワール会で中村医師の思いを受け継ぎ、アフガニスタンで灌漑水利事業を進めている。

中村医師は2001年、タリバンが世界的に有名なバーミヤンの仏教遺跡などを破壊したときに次のように語っている。

今世界中で仏跡破壊の議論が盛んであるが、我々は非難の合唱に加わらない。アフガニスタンの国情を尊重する。暴に対して暴を以て報いるのは、我々のやり方ではない。
餓死者百万人と言われるこの状態の中で、いま仏跡の議論をする暇はないと思う。少なくともペシャワール会=PMSは、建設的な人道的支援を、忍耐を以て継続する。我々はアフガニスタンを見捨てない。

つまり、政治や民主主義などの能書きを語る前に、安全な水と安心して暮らせる食料の確保こそがアフガニスタンに最も必要な支援であると述べるのだ。20年以上も前の言葉である。
一介の地理教諭であるが、授業の中でこうしたことに思いを寄せるような生徒を育てていきたい。また思いだけでなく、実際の医療や農業、建設現場で力を発揮するような若者を送り出していきたい。

「イラン最終文書に慎重姿勢」

本日の東京新聞朝刊に、イランの核合意の再建に向けた欧米と交わした最終文書の調整に関する記事が掲載されていた。文書の詳細は分からないが、イランに対する経済制裁を早く解除したいという欧米各国の焦りが滲み出ているように感じる。

イランはベネズエラ、サウジアラビア、カナダについで原油埋蔵量が多い国である。ロシアからの天然ガスの輸入が滞っている現在、特に欧州では化石燃料の確保に躍起となっている。イランは欧州に近いため、原油のパイプラインもトルコやアゼルバイジャンを経由すれば比較的設置は用意なのではないだろうか。

2学期以降の資源・エネルギー問題の授業の時に、この点を深掘りしてみたい。

「令和2年度エネルギーに関する年次報告」(資源エネルギー庁 エネルギー白書2021)

「イスラエル軍 ガザ空爆」

本日の東京新聞朝刊に、イスラエルが地中海に面するパレスチナ自治区ガザに大規模な空爆を展開したとの記事が掲載されていた。
イスラエルについて書くのは難しいが、ざっくりまとめると、第2次大戦後に英米軍のバックアップを受けたユダヤ人が、パレスチナ人が住んでいたイスラエルに入植してきて、パレスチナ人を軍力で追い払い、自治区という名称の2地区で監禁しているのが実態である。古代中世の話を持ち出すとややこしくなるので割愛する。

イスラエルの1人あたりのGDPは約51,430ドル(2021年 世銀)で、経済成長率は8.1%(2021年 イスラエル中央統計局)となっている。ハイテク・情報通信分野及びダイヤモンド産業を中心に経済成長ており、さらに排他的経済水域内において、大規模な天然ガス田の開発が進められている。

ウクライナ戦争に影に隠れてしまっているが、イスラエル軍の非道な犯罪行為はもっと報道されるべきである。

メモ書きのみ。

「欧州で干ばつ深刻」

本日の東京新聞朝刊に、欧州全域で干ばつが深刻化し、フランス、スペイン、ポルトガル、イタリアなど地中海に面した国で農作物の収穫量の急減が懸念されている。

授業や講習で何度も触れている地中海性気候に関する記事である。地軸が23°傾いているため、春秋は北緯20〜30°に位置する亜熱帯高圧帯が夏には北緯40°付近まで北上してくる。ざっくりいうと、サハラ砂漠を作った高圧帯が夏に地中海にやってくるのである。

上記がイタリア・ローマの雨温図である。夏は極端に降雨量が減り、月に10mm程度になってしまう。ただし気温は22℃を超えるので、ケッペンの気候区分でいうとCsaである。今年は特にひどく、熱波と干ばつがダブルで欧州全体を襲っている。地中海沿岸では、夏は乾燥に強いオリーブやレモン、オレンジ、トマト、ブドウを育てているが、あまりの水不足でそうした作物すら大幅な収穫減少が危惧されている。
こうした状況が続くようだと、地中海沿岸の農作がナツメヤシとなる日も近いであろう。