一 地図の種類
球体である地球の表面を平面の地図に表そうとしても必ず歪みが出てしまい,形や面積,距離,方位の全てを正しく表すことはできない。利用する目的によって,以下のいずれかの条件を満たした地図を選択したい。
〈地図の望ましい条件〉
a 地球上の角度が正しく表現できる(正角)
b 地球上の距離が正しく表現できる(正距)
c 地図上で面積が正しく表現できる(正積)
Orthographic projection(正射図法)
球面の地球を平面の地図に表すためには地図投影法が用いられる。球を平面や円錐,円筒に投影することにより,様々な地図がつくられる。正射図法とは,地球から無限の遠方に視点をおき,地球に接した平面に投射するものである。この図法では半球を全部表現することができるが,正積でも正角でもない。非常な遠方から地球を見た場合と同じように表現される。
Mercator図法
地球の真ん中に視点をおき,円筒に投影する図法である。1569年にMercatorが航海用世界全図に用いたもので,経線は等間隔の平行直線、緯線は経線に直交する平行直線なので、出発地と目的地を直線で結ぶと,その直線と経線との間の角度は常に一定となる。その角度に船の進行方向(等角航路)を合わせれば目的地に着けるので,大航海時代と相俟って広く普及した。しかし,極点に近づくほど緯線が実際よりも長くなるので,高緯度にある陸地の面積が実際よりも大きく表示されてしまう。例えばGreen Landは実際よりも17倍も大きく描かれてしまう。
Universal transverse Mercator図法
Mercator図法の円筒面を90度回転させ,ある特定の子午線のまわりに巻きつけたもの。地球全体を経度6度ごとに60のゾーンに分け,各ゾーンごとに,それぞれの円筒に投影する。一枚の地形図の形は不平等四辺形で,一枚ずつ大きさがちがうが,同じ6度幅の座標軸の中では同一平面上でつなぐことができる。中央経線と赤道は直線であるが,経緯線は大方互いに直交する曲線となる。日本では1955年からUTM図法を地形図として用いている。
Equidistant conical projection(正距円錐図法)
地球の真ん中に視点をおき,円錐に投影する図法である。円錐と直角に接する標準子午線付近は面積,距離,形とも比較的正しく表現されるので,東西に長い地域の地方図に利用される。正距の条件を満たすのは,経線方向のみであり,面積は標準子午線から離れる程拡大される。古代Greeceのプトレマイオスが用いのたのでPtolemy図法とも呼ぶ。
Bonne図法
正距円錐図法の経線間隔を縮尺に比例した経線上の点を値にした正積図。緯線は等間隔の同心円で,経線は,中央経線から経線ごとに正距で等間隔になるよう点を通る曲線で表される。中央経線,標準緯線付近の形が自然なので,中縮尺の地方図に用いられる。周辺部の形の歪みが大きいので,世界図には不適。
二 細部の測量
現在,大規模な測量はGPSに地位を譲っているが,小地域の測量や建設現場での地形の形状把握など,三角点や水準点が広く用いられている。
三角点〜水平位置の基準
東京都港区麻布台2-2-1の経緯度原点を基準として,三角測量を用いて位置を測量するための基準点である。一等から四等まで,全国に約85,000地点ある。三角マークの中心が真の位置を示し,メートル以下1位までの標高が付記されている。三角測量とは三角関数を測量に応用する方法であり,簡易な測量器で正確な地形図を作成することができる。
水準点〜垂直的位置の基準
東京湾の平均潮位を0mとして,東京都千代田区永田町1-1にある日本水準原点の標高を24.4140mと測定し,これを基準に,全国の主要道路沿いに,1~2kmごとに設けられている。
三角点や水準点などは,所定の基準で測量された最も正確な基準点であり,地殻変動を定量的に把握するデータともなっている。2011年10月に国土地理院より公表された「東北地方太平洋沖地震に伴う三角点及び水準点の測量成果」においても,女川町での水平方向の最大変動量5.85m移動,石巻市での垂直方向の最大変動量1.14m沈降と細かく発表されている。
参考文献
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)
『新編地理資料』(東京法令出版 2012)