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『チェーザレ』

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惣領冬実『チェーザレ—破壊の創造者』(講談社 2006~2008)の第1巻から第5巻まで読む。
マキャベリの『君主論』の中で理想の君主とされているチェーザレ・ボルジア(1475-1507)の生涯を、史実を踏まえつつ大胆に描く。大昔の世界史の勉強の中で聞いたことがある名前ではあったが、ただ文化史の用語として暗記しただけだったためか、あまり印象に残っていない。チェーザレは司教なのだが、分裂しているイタリア諸国家を束ねる政治家・策略家でもある。現在でも連載が続いている作品であり、第5巻まではチェーザレの学生時代の話であり、その策略家としての片鱗が描かれる。
ピサ大学での学生生活の細かい様子や、現存されていない当時の建設様式や壁画なども、大学の研究者のアドバイスを基に丁寧に描かれており、歴史の参考書として読むこともできる。

『MW』

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手塚治虫『MW(ムウ)』(小学館文庫 1995)を読む。
数年前に玉木宏主演の映画で観たときは、後半のガサツな展開にがっかりきたのを覚えている。
しかし、漫画の方は想像力で補う部分もあり、1960年代、70年代の戦争と反戦運動の交錯した雰囲気がよく伝わってきた。
米軍と自民党の蜜月な関係や新左翼のテロ、同性愛など、正義と友情の手塚漫画とは思えないようなテーマを扱っており、映画化が難しいと言われた理由もうなづける。
アマゾンのレビューに「読みながら、頭の中にジャズがうるさく響きました。そして、灰皿を埋める煙草の匂いまでも。」というコメントが載っていたが、なかなかニクい表現である。

『弱虫ペダル』

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渡辺航『弱虫ペダル』(秋田書店 2008~2012)の第1巻から22巻までを一気に読んだ。
週刊少年チャンピオンに現在も連載されている、高校の自転車競技部を題材とした少年漫画である。
少年向けの漫画を読むのは、いったい何年ぶりであろうか。

インターハイのロード種目というあまり聞き慣れないスポーツを扱っているが、少年漫画の王道を行くような内容となっている。
ちょっと落ちこぼれのアニメおたくの主人公小野田坂道くんがひょんなきっかけで、自転車ロードレースで全国1位を目指すことになるのだが、ライバルと争いや仲間との友情、努力と根性を丸出しにしながら、わずか数時間の試合の中で驚異的に速くなっていく。ママチャリからロードレーサーへ、ビンディングやドラフティングを覚え、限界を超えて「進化」していく姿も興味深い。わずか10数秒のシーンなのに、心理描写のコマや回想の場面が2週、3週に渡って続く。

40代のおっさんにとっても、昔懐かしい『キン肉マン』や『キャプテン翼』、『ドラゴンボール』、『魁!!男塾』などの漫画に夢中になった小・中学生時代を思い出す

『チンギス・ハーン』

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横山光輝『チンギス・ハーン』(秋田書店 1992)を読む。
全5巻セット漫画で、チンギス・ハーンの誕生から戦争に明け暮れる晩年までが描かれる。
モンゴル帝国の騎馬軍の活躍は世界史の教科書で学ぶところであるが、モンゴル族統一以前に、度重なる部族内や親族内の争いがあったことは知らなかった。謎に包まれた人物なので、多分に脚色が加えられていることは差し引いても、チンギス・ハーンの度胸の強さと度量の大きさが伝わってきた。

『虹色のトロツキー』

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安彦良和『虹色のトロツキー』全8巻(潮出版 1997)を読む。
あまり漫画を読み慣れていないのだが、実在の人物も登場するので、話の背景は掴みやすかった。
日本人とモンゴル人の間に生まれ、満州事変の余波により父を殺され、記憶を失ったウムボルトが、五族協和を目指す満州の建国大学に入るというところから話は始まる。やがて彼は抗日聯軍の戦士となったり、関東軍の指示で満州軍の少尉となったりと当地の複雑な利害関係に翻弄され、最後は満州国内のモンゴル人を率いて、ロシアをバックにしたモンゴル人民共和國軍との壮絶な戦いに身を梃する数奇な運命をたどる。
フィクションではあるが、単純には語れない戦争の現実の一端を垣間見ることができた。

石原莞爾というと、「世界最終戦争」というトンデモない発想をする頭の悪い軍人だと思っていたが、この『虹色のトロツキー』では、一歩高みに立って政界情勢を見渡すことができる人物として描かれている。
また、当時の満州国が内モンゴル自治区やロシア領土内のユダヤ自治州と国境を接しており、政治的な駆け引きが跳梁跋扈したという歴史的事実は興味深かった。

安彦良和氏の作品は、中学校時代に『アリオン』や、『ヴィナス戦記』のアニメ映画と漫画を読んで以来である。『アリオン』や『ヴィナス〜』も、単純ではない人間関係と、ハリウッド映画とは異なるすっきりしない終わり方が印象的であった。