奈良貴史『ネアンデルタール人類のなぞ』(岩波ジュニア新書,2003)を読む。
ネアンデルタール人は、1856年にドイツのデュッセルドルフ郊外のネアンデル渓谷で見つかった人骨の研究が契機となっている。「旧人」として知られ、氷期の3万5000年前に絶滅している。ヨーロッパ全域からカスピ海東部の中央アジアにかけての狭い地域のみに分布しており、アフリカからは化石が発掘されていない。
一般的に500万年前の猿人から100万年前の原人、そして50万年前の旧人から20万年前の新人へと一直線に進化したと教えられるが、実際は旧人類のネアンデルタール人と現生人類のホモ・サピエンスは全くの別種で、併存していたそうだ。骨格の研究から言語を話すことはできなかったようだが、著者は火の使用や埋葬の習慣などはあったと主張している。