『現代イスラムの潮流』

少し古い本であるが、宮田律『現代イスラムの潮流』(集英社文庫 2001)を読んだ。
9・11のテロ以降、「ムスリム(イスラム教徒)=物騒な、怖い人びと」というイメージがテレビ報道によって喚起され定着されつつある。しかし「イスラム」という語はアラビア語で「平和」を意味する「サラーム」という語から派生しているように、元来ムスリムはアッラーの下での平等社会の形成を目指すものである。「ジハード(聖戦)」も元々は「ムスリムの強い努力を伴う行動」という宗教的な色合いのもので、「イスラム過激派」なるものも欧米による冷戦構造における軍事支援の結果であると著者は述べる。そのためにブッシュ米国大統領の言う個人主義を重んじる「人権」は、平等を尊ぶイスラムの共同体を破壊し、貧富の差を拡大するものでしかない。そうしたアメリカニズム=グローバリゼーションが拡大すればするほど、イスラム自身のアイデンティティを守ろうとする「イスラム原理主義」が台頭してくるという流れは是非とも理解する必要がある。日本でももう数年すれば、イスラムとは違う形で「日本原理主義」なるものが様々な局面で現れてくるだろう。

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