〈児童福祉論2〉

 私の居住する埼玉県春日部市における次世代育成支援計画について述べてみたい。東京のベッドタウンとして発展してきた春日部市も,2003年の段階で,合計特殊出生率1.13と全国平均を大きく下回っている。また,恐喝や暴行などの少年犯罪も増加している。

 市のアンケートでは,子育て支援として,経済支援がトップを占め,次に保育所や幼稚園の整備,さらに児童館や公園などの子どもの遊び場の拡充が挙げられている。これらの調査を踏まえ,春日部市では「地域社会における子育て支援サービスの充実」「母性,乳幼児等の健康の確保と増進」「学校と地域との連携による教育力の向上」「子育てを支援する安全・安心な生活環境の整備」の4項目を目標に掲げ,「子育て支援ネットワーク」の形成を中心とする200近い施策を盛り込んだ計画を発表した。

 一つ目に,保育サービスの向上施策を取り上げて見たい。市内には公立8ヶ所,私立9ヶ所の保育所が設けられているが,公立私立とも定員を大きく超えているのが現状である。また休日・夜間保育を行なっている保育所はなく,共稼ぎや母子家庭に大きな負担が強いられている。計画では定員の弾力化による受け入れの拡大,午後7時までの延長保育の拡充や,一時預かり,乳幼児子育て相談,さらに幼稚園の空き教室を利用した乳幼児の保育事業などが掲げられている。しかし,ニーズの高い休日保育事業は新規に1ヶ所のみ行われるだけである。特に公立の保育サービスの時間延長の動きは鈍く,公務員の勤務体系そのものを根本的に変えていかなくては,利用者のニーズを満たすまでに至らないであろう。

 また,児童虐待防止対策として,パンフレットや講演による啓発や教育相談窓口の設置,助産士による子育て支援講座などが謳われている。しかし,その受入先となる児童相談所との実質的な連携は計画に入っていない。警察や教育機関との協力体制の構築が不可欠と指摘しているが,口当たりのよい宣伝文句だけで,市役所がリーダーシップをとった施策は全く省かれている。昨今,親権者による虐待事件がマスコミを賑わすが,啓発と相談体制の充実だけでは,画餅に終始してしまう。さらに一歩踏み込んだ取り組みを期待したい。

 最後に,少年犯罪の増加や核家族化が進む中,高齢者と児童が交流することで,人とのふれあいが育まれると喧伝する「昔の遊び教室」を検討したい。何ともアイデアのないお役所的な発想であり,2つの公民館で実施されているが,ほとんど参加者もいないのが現状である。長続きする世代間交流は,様々な年代の人が集まって,学び教えあう生産的な活動である。地元の野球チームや剣道会などでは,親子3代にわたった活動も珍しくない。無理に交流を仕立て上げるような机上の発想を捨て,地域のスポーツ団体や武道団体,各種サークルなど民間の活動を促すための補助金や施設開放を優先したい。

 参考文献
 春日部市役所「春日部市次世代育成支援行動計画」2005

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