〈社会福祉援助技術演習4〉

 今年の初め,知的障害者更正施設で現場実習を行なった。重度の知的障害者との触れ合いの経験を踏まえて,論を進めていきたい。

〈生活リズムの確立〉
 知的障害者の場合,利用者ごとにこだわりが強く,バランスのよい食生活や睡眠のリズムが崩れることが多い。個々のこだわりやわがままを抑え,集団生活の中で,食事や睡眠のリズム,適度な運動や入浴の習慣を身につけさせていきたい。生活のパターンをむやみに変えていくと混乱を生じさせるので,基本的に毎日同じ時間に同じ行動を全員で行うことを原則としたい。食事の時間や席次,顔ぶれも同じくし,運動も曜日ごとにパターンを決めて全体の日程を組むと,見通しを持ちやすく,パニックを起こすことも少ない。

〈身辺処理の自立〉
 更衣や通所通勤,持ち物の管理といった自律的生活習慣においては,個々の利用者の生活能力と行動力に応じ,一人ひとりに合ったプログラムを組んでいきたい。一から十まで支援するのではなく,利用者の現能力より少しだけ高いところに目標を置き,支援者の指導と助言によって,利用者が努力と達成感を適度に得られるような工夫があるとよい。例えば,服を着替えることができるが自分で行おうとしない利用者に対しては,指図と声掛けを中心に行い,ボタンやベルトを締めることが難しい利用者へは,手を支えて行動を促すなど,本人の行動を少しだけ支えるようにすると利用者とのやりとりもスムーズである。

〈仕事(作業)への参画〉
 朝起きて作業現場に赴き,仲間とともに作業に携わり,報酬を得る仕事は,社会に関わる自分の存在と責任を確認することができる最も人間らしい行動である。利用者の能力と意欲に応じた労働の場所と機会を少しでも増やしていくことが,福祉援助の大目標である。
 重度の知的障害者の場合,見通しの持ちやすい作業体系を組んでいく必要がある。行動の確認が取れやすいように,それぞれの工程を細かく分割し,一つの作業を単純にするといった工夫が求められる。さらに,自分の関わった作業が最後に完成形として見えやすくすると達成感を得やすい。陶芸や手芸など完成したものを手に取ったり,清掃活動やジグソーパズルなど明らかに目に見えるゴールを設定することが求められる。

〈家庭・地域との連携〉
 知的障害者を受け入れてくれる福祉工場や授産施設,作業所はまだ少ないのが現状である。家族や行政,地域のボランティア団体との協力で,先頭に立って施設や作業所を開設していくことも福祉援助技術に含められる。
 重度の知的障害者を長いスパンで支援していくには家族の理解と協力が不可欠である。障害者を支える家族は家族関係含めて様々な悩みを抱える事が多い。家族支援を視野に入れた福祉援助技術が,今後の社会福祉士には求められる。

〈参考文献〉
飯田雅子・一番ケ瀬康子「障害者福祉Ⅱ」『新・社会福祉とは何か?』ミネルヴァ書房,1990

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