〈医学1〉

 主な生活習慣病には高血圧症,糖尿病,高脂質血症,通風,骨粗鬆症の5つがあるが,そのうちの4つは肥満と深い関わりがある。
 病気や障害の予防には健康増進による発病そのものの予防,早期発見,早期治療による合併症進行の予防,そしてリハビリテーションによる心身の障害や機能の維持,回復という3つの段階があるが,生活習慣病は毎日の生活の中で健康増進を図ることによって発病を未然に防ぐことが大切である。
 一般に肥満度が上昇すると,摂取栄養の約50%を占める炭水化物の代謝を制御するホルモンであるインシュリンの活動が低下(インシュリン抵抗性)する。そのため体内で過度にインシュリンが産生されるようになって,癌細胞の増殖の原因ともなる。さらに老化や肥満が進みインシュリンが産生できなくなると,糖尿病になってしまう
 生活習慣病につながる肥満の予防策として「一無、二少、三多」の心がけが重要である。
 「一無」とは禁煙である。喫煙は肺がんの危険因子であるばかりでなく、血管を収縮させて血圧を上昇させたり、活性酸素を発生させて悪玉コレステロールの酸化を促し、動脈硬化を促進させる。
 「二少」とは小食,少酒のことである。過度な食事や飲酒は生活習慣病の直接の原因となっている。その予防として,まず第一に,摂取栄養については肉の脂やバター,スナック菓子などの動物性脂肪に多く含まれている飽和脂肪酸の摂取を減らし,イワシ、サバなど青身魚や、オリーブ油、サラダ油などの植物性脂肪に多く含まれている不飽和脂肪酸をなるべくたくさん摂取することである。飽和脂肪酸を多く摂り過ぎると、血液の粘度が高くなって、血が流れにくくなり、やがて動脈壁に脂肪やコレステロールが沈着、血中コレステロールの濃度が上がり、動脈硬化を引き起こす原因になる。そして、心臓病などの危険が高まる。
 そして,第二には野菜や果物の種類を豊富に摂ることである。野菜・果物には,カロテノイド,葉酸,ビタミンC,フラボノイド,フィトエストロゲン,イソチオシアネート,食物繊維などが多く含まれる。特にごぼうや小豆に多く含まれる食物繊維にはコレステロール値の低下や血圧上昇を抑制する機能がある。さらに,便通を促すことで腎肝機能の強化も図ることができる。
 最後の「三多」とは多動と多休、多接のことである。特に多動が大切で,有酸素運動といわれる酸素を活発に取り込んで行う,ジョギングやサイクリング,早歩き,水泳,エアロビクスなどの定期的な運動が効果的である。その結果,軽症の糖尿病や軽度の肥満者の血糖値やインシュリンの抵抗性を是正することや,カルシウム摂取量を併用することによる骨塩量の改善効果が期待できる。また適度な休養と友人との交際はストレスを和らげ,インシュリンの過分泌を抑える効果がある。

 参考文献
 高橋龍太郎「なぜ中年の肥満は悪いのか」『図解 老化のことを正しく知る本』 中経出版,2000年

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