〈社会福祉援助技術演習1〉

 カウンセリングは個人ないしはその家族を対象としており,クライエントが自己を客観的に分析し,自身の自己実現能力を引き出すことを目的として行われる。一方,社会福祉援助技術は個人や家族だけでなく,集団や地域社会を対象に,個人と家族や地域の関係性,また,地域と社会の関係性をつなぎ,向上させていくものである。

 カウンセリングは,クライエントが悩み過ぎて目の前の問題を正確に捉えることができない場合に行われる。そのため,クライエントと直に向き合って,クライエントにとってのスーパーバイザー的な役割を果たす。クライエントの発言を全て受容し,共感的態度を示し,内容を言い換えたり,明確化したり,繰り返したりして,問題を浮き彫りにてクライエントに返していく。

 しかし,社会福祉援助技術は「援助」と名前が付く通り,他者に対して能動的な働きかけを行なうものである。被援助者抱える問題を診断し,被援助者のニーズやウォンツを明らかにし,その実現に向けての処遇計画を作成し,その計画に沿って実際に個人ないし集団を動かしていくものである。そのため,被援助者と直に向き合うだけでなく,被援助者が問題をどのように認識し,どのような展望を持っているのか,また,個々の人間関係,社会関係に留意して援助に当たる必要がある。

 近年ノーマライゼーションの進展により,これまでの人里離れた入所型施設ではなく,可能な限り住んでいる地域で家族と共に在宅で過ごすための手間のかかる福祉サービス体制が求められている。しかし,その分だけ家族や近隣住民による日常的な手助けや気配り,また隣近所との調整などが必要になる。また在宅福祉サービスを提供する機関や団体が結びつけられ,相互の連絡・調整が図られねばならない。社会福祉援助技術はそのような人びとの間に立って,実際に計画し,行動していく中間管理職のような仕事なのである。

 そうした援助技術もまずは話を聞くところから始まる。元国立国語研究所長の水谷修は「聞き手としては,話し手が言っている内容に自分が同感したり,深く感動したりした場合には,それなりの表現で自分の気持ちを相手に伝えなければならない。話を聞きながら,的確に一つ一つ応じていくという態度が,コミュニケーションの効率を高めるし,また,必要であれば,説明や説得の方向に発展していくことにもなるのである」と述べる。

話し方研究所の内山氏は説得につながる傾聴のポイントとして,次の7点を挙げている。

  1. 話し手自らの気付きは,変革の出発点
  2. 話の途中でさえぎらない
  3. ひと区切りついた所で要点を明確にする
  4. 励ますあいずちを入れる
  5. 視点を変えた質問で気付きを促す
  6. 本音が出やすいように,安心感を与える共感のあいづちを
  7. 気付いたことを,ほめ言葉でたたえる

 参考文献
 一番ヶ瀬康子監修『教科書社会福祉』一橋出版,1997年
 NHK編・水谷修他著『じょうずな話し方:豊かな人間関係をつくる知恵』KKベストセラーズ,1980年

内山辰美『上手な聞き方が面白いほど身につく本』中経出版,2001年

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