日本の社会福祉援助技術はイギリスやアメリカで発展してきたソーシャルワークの考え方や実践方法・技術などに基づいて確立されてきた。その技術は、何らかの生活課題や社会的障害を抱え、サービスを必要としている個人や家族に直接働きかける直接援助技術と、クライエントの親族や友人関係、生活環境や地域性などを考慮し、生活の全体計画を作成する間接援助技術に大別される。
社会福祉援助技術は、支援を必要とする個人や家族へのカウンセリングとは異なり、地域で生活する個人、多様な社会的なつながりを有する家族の自立に向けた支援をその目的としている。それは単に金銭面や身体・健康面での自立のみならず、政治的、文化的、社会関係的な自立を目指すものでなければならない。これまでの社会福祉は直接に支援を必要とする者を対象としてきたが、これから求められる社会福祉は、支援を必要とする者を支えるべき親族や友人、または地域、行政のあり方を変えていくことである。
しかし、地域や行政を変えると言っても、単に入浴や食事サービスを増やしたり、手摺りやスロープを設けるだけでは共に生活していくことはできない。高齢者を迎え入れることで家族や親族の間にいさかいが生じ、引いては育児や介護する者のストレスなど高齢者問題とは別の問題も生じるおそれがある。また学齢期の障害児を在宅で育てていくことで、地元の養護学校の通学路の調整に伴うトラブルや、近隣の住民から苦情が舞い込む可能性もある。
以上のように、都市生活の「過密」化と人間関係の「過疎」化によって、一つの問題が多くの問題に影響を及ぼしてしまう。社会福祉援助に携わる者は、例えば高齢者を迎え入れる家族に対しては、介護する者のための医療サービスや高齢者を看る時間を確保するための育児サービスの利用などの相談に乗らなくてはならない。また、障害児を受け入れる親に対しては、学校や児童相談所との緊密な連携体制の援助を行わなければならない。
社会福祉援助技術とは、今後求められる福祉や医療・教育のネットワーク化や福祉組織化、地域組織化などを目的として行われるものである。つまり社会福祉援助技術は、人間による人間のためのサービスという視点に立って、個人と家族、地域の関係、また、地域と社会の関係を結んでいく作業である。つまり地域社会における、人々の「つながり」を再構築し、誤解や偏見を克服し、多様な人間が地域で共生していける土壌を作ることである。
伊藤隆二東洋大教授は、社会福祉援助技術とは社会的に「弱い」立場におかれている人たちと共存共栄の人間関係を構築することであり、引いては、戦争や民族蔑視のない世界の平和を築く作業であると述べている。
参考文献
一番ヶ瀬康子・伊藤隆二監修『教科書 社会福祉』一橋出版 1997年