東京新聞国際面から

EU離脱後の英国が唯一、EU加盟国と陸続きの国境を接することになる北アイルランドが特集されていた。アイルランド4州と接する北アイルランドのファーマナ州は、かつてカトリック過激派アイルランド共和軍(IRA)の攻撃に最前線で晒された経験を持つ。英国・アイルランドともEUに加盟した後は一日3万人が自由に行き来できるようになったが、今後は英国の欧州連合離脱で人や物の移動に規制が加わることになる。今後、厳格な国境管理が導入されれば、またテロの機運が盛り上がることが懸念される。IRAの政治組織シン・フェイン党は、南北アイルランドの統一は、住民投票で問うべきだと主張するが、ファーマナ州の住民は「EU離脱を利用して、軍事で失敗したアイルランド統一を政治的に達成しようとしている」と反発する。

90年代後半から20年余り、人や物、金が自由に行き来するグローバル社会を礼賛する風潮が続いたが、いよいよそうした自由の代償に対する見直しが始まりつつあり、北アイルランドのような戸惑いが今後も各地で発生してくるであろう。

北アイルランド紛争
1937年に英国から独立したアイルランドに対し、島北部は英領にとどまったが、英国統治を望む多数派のプロテスタント系と、アイルランド帰属を訴える少数派のカトリック系が対立。60年代後半に武力闘争に発展し、計3000人余の犠牲が出た。英国・アイルランド両政府を含む当事者が、98年に和平合意に至った。

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