『マンガ 聖書物語〈新約編〉』

樋口雅一『マンガ 聖書物語〈新約編〉』(講談社+α文庫 1998)を読む。
イエス・キリストの誕生から、十字架の磔刑までと、復活してからの使徒の活躍、パウロのローマ到達までが一冊のマンガ文庫に収められている。
パウロの伝道の旅を地図で確認しながら読んだ。イスラエルやシリア、ギリシャ国内は当時の地名の名残が残っているが、トルコ国内では全く別の地名となっており、伝道の道筋を辿るのに少し戸惑った。

私の知識だと、キリスト教とローマ帝国は水と油であり、ローマ帝国はキリスト教の拡大を徹底して迫害したというイメージが強かった。キリスト教はローマ帝国の執拗な弾圧から逃れながら、庶民に浸透していった宗教であり、その点から、勝手に小林多喜二の『党生活者』のような、コミンテルン時代の共産主義と似たイメージを持っていた。しかし、イエス・キリストや使徒たちの裁判の様子を読んでいるうちに、キリスト教は時の政府を打倒することのみを目的としておらず、当時、ギリシャや西アジア、北アフリカ全域を支配していたローマ帝国の威光を背景にして伸張していったことが分かった。パウロ自身もローマ市民権を武器にして鞭打ちに刑の不当性を訴えている。
また、キリスト教は、誕生当時から外国人への伝道についての議論があり、生まれながらにして国際性を持っていたということが理解できた。

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