徐京植『子どもの涙:ある在日朝鮮人の読書遍歴』(柏書房 1995)をさらっと読む。
早稲田大学文学部を卒業し、法政大学や立教大学で教壇に立ってきた、文芸評論家の徐京植さんの読書体験や兄弟の話、1960年代の朝鮮人の境遇などが語られる。
中野重治についても触れられていて嬉しかった。一部を引用しておきたい。
中野重治は、魯迅を読むと「自分もまたいい人間になろう、自分もまたまっすぐな人間になろう、どうしてもなろう」「一身の利害、利己ということを振りすてて、圧迫や困難、陰謀家たちの奸計に出くわしたとしても、それを凌いでどこまでも進もう、孤立して包囲されても戦おう、という気に自然になる。そこへ行く」と書いている。
それを見てわたしは、ああ、いかにも中野重治らしいな、ほんとうにそのとおりだな、と思うのである。
また、著者は早稲田大学の学生時代に、在日韓国人サークルに入ったと述べている。かつて3号館地下にあった、あのサークルであろうか。在日朝鮮人のサークルと同じフロアーの隣にあった、あのサークルボックスであろうか。