月別アーカイブ: 2023年3月

『現代物理学の世界』

久保謙一『現代物理学の世界:フロンティアを拓いた人びと』(岩波ジュニア新書 1998)をパラパラと読む。
相対性理論を構築したアインシュタイン、ニュートリノを予言したヴォルフガング・パウリ、中性子星パルサーを発見したジョスリン・ベル、青色発光ダイオードを実用化した中村修二の4名を取り上げ、21世紀につながる物理学の発見が紹介されている。数式が結構多かったので、読み流すところが多かった。

その中でも中村修二さんの青色発光ダイオードの開発が興味深かった。この本が発行されたのは1998年だが、青色発行ダイオードの発明で世界が変わったといっても過言ではない。青色発行ダイオードは他の色と組み合わせることで白色LED電球の普及が進んだ。またスマホやタブレットのLEDバックライトも今や日常生活に欠かせない技術となっている。他にもブルーレイディスクや電光掲示板、信号機など、今話私たちの生活は24時間、青色発光ダイオードに囲まれているのである。

そんな中村修二さんは2014年にノーベル物理学賞を受賞している。

『広末』

広末涼子『広末』(角川書店 1999)を読む。
雑誌の連載だろうか、高校3年生から大学1年生にかけて、マスコミでワイワイ騒がれながらも、仕事や勉強に真摯に取り組む彼女の本音が綴られている。高校時代の仲間と大騒ぎしたり、大学の友人の恋愛話の相談に乗ったり、世間のイメージとのギャップに悩んだりと、10代最後の2年間を過ごす等身大の著者の心の裡が語られる。ちょうど当時のラジオを聴いているような感覚である。
文章力や自己分析を含め、彼女の才能の片鱗を感じる一冊であった。

広末が入学に伴う「留年者在庫一掃セール」の煽りを受けて卒業した身としては、彼女に足を向けて寝ることはできなかった。彼女がCMを担当したimodeの操作する様子や、映画『鉄道員』の撮影など、当時バタバタしていた頃の雰囲気が思い出された。

そういえば、1999年の入学式は、まだ仕事が始まってなかったので、ビラまきに行ったんだっけ。

本を読んでる。デカルトとか…なんて言うと、なんだ堅そーと思うかもしれないけれど、けっこうあの人、夢や希望を与えてくれる。哲学用語ばかりじゃないので、ニーチェやカントよりずっとわかりやすい。

「『日本のカッパドキア』吉見百穴が人気」

本日の東京新聞朝刊に埼玉県吉見町横穴墳群「吉見百穴」が人気を回復しているとの記事が掲載されていた。吉見町では世界遺産にも認定されているトルコの奇岩「カッパドキア」に準えて宣伝に力を入れている。カッパドキアはトルコ中部のアナトリア高原にあり、ローマ時代には地下に教会や都市が作られている。

地理的に解説すると吉見町もカッパドキアも凝灰岩なので、柔らかく加工しやすいという特徴を持つ。関東地方は関東ローム層と呼ばれる凝灰岩の地層に覆われている。この300万年の間に富士山や箱根山、浅間山、榛名山、赤城山、男体山などが噴火した際の灰が積もって固まった地層である。また、トルコ国土の大半を占めるアナトリア高原も日本と同じ新期造山帯に属し、火山活動や地震活動が盛んなことで知られる。安定陸塊では見られない光景である。

『宇宙就職案内』

林公代『宇宙就職案内』(ちくまプリマー新書 2012)を読む。
中学生・高校生向けに宇宙関連の仕事が平易な語り口で紹介されている。宇宙飛行士やロケット開発に始まり、コンピュータを用いた宇宙物理学(理論屋)、望遠鏡の操作(観測屋)、すでにインフラになっている衛星ビジネスの実態など、大変分かりやすかった。著者の文章力や構成力の賜物であろう。

すでに分かっていることであるが、衛星によって水温やクロロフィルの量が観測できるので、地球観測データが暖流域にいるマグロや寒流域にいるカツオなどの漁業にも使われている。あれ、カツオって寒海魚だったっけ?

『宇宙のかたちをさぐる』

池内了『宇宙のかたちをさぐる:”泡宇宙”の発見』(岩波ジュニア新書 1988)をパラパラと読む。
著者の池内さんは京都大学を卒業後、北海道大学で助教授を務め、東京大学天文台の助教授を経て、大阪大学の教授、名古屋大学の教授と、旧帝大を渡り歩いた人物である。現在でも「世界平和アピール七人委員会」のメンバーを務め、「九条科学者の会」の呼びかけ人でもある。大変エネルギッシュな方である。

本作は地球の大きさを測ったアレクサンドリアのエラトステネスからビッグバンまで、中学生にもわかるようなソフトな語り口で、難解な宇宙物理学を語っている。「ザ・岩波ジュニア新書」といった内容であある。現在でも宇宙は無数の泡がポコポコ膨らんでいくと推測されているようだ。