本日の東京新聞朝刊国際面から
親ロシア国の筆頭と目されてきたベラルーシに関する記事である。ルカシェンコ大統領が述べるように、両国間に溝が生まれるようだと、地政学的にロシアにとってマイナス面が大きくのしかかるだろう。陰でベラルーシに政治的・経済的に援助する国があるのかもしれない。アメリカ? 中国?
【モスクワ=栗田晃】
ロシアが石油、ガスの値上げで揺さぶりをかけ、旧ソ連の隣国ベラルーシに統合を迫る動きを強めている。プーチン大統領は昨年末、ベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、ロシアが輸出する資源価格改定を議論。並行して両国が1990年代末に合意した連合国家創設の協議を促進することを求めたが、ベラルーシ側は「ロシアへの吸収を狙うものだ」と反発する。
両首脳は12月25日に4時間協議し、29日の再会談も3時間半に及んだ。プーチン氏は29日の会談冒頭、「連合国家創設の計画発展に向けて努力しよう」と呼び掛けた。
1994年から長く権力を握るルカシェンコ氏。99年、ロシアのエリツィン大統領(当時)との間で政治、経済、軍事面の統合を目指す連合国家創設の条約を調印したが、翌年のプーチン氏の大統領就任後は進展がなかった。2000年代になって経済成長したロシアがベラルーシを吸収する野心を見せ、両国の足並みは乱れた。
ロシアは今年から石油の輸出関税を引き下げ、24年までに撤廃する予定。これに伴い同盟国として関税面で優遇されてきたベラルーシはその恩恵を失い、今後6年で百億ドル(約1兆1千億円)の損失が出るとも想定される。12月上旬の国際会議で損失補填(ほてん)を求めたルカシェンコ氏に対し、プーチン氏が交換条件として「別次元の統合が必要だ」と返答し、連合国家構想が再浮上した。
ベラルーシも経済面で依存するロシアの圧力には逆らえず、統合を協議する作業部会設置には合意したが、不満はくすぶる。ルカシェンコ氏は10日の政府会議で「ロシアが西にある唯一の同盟国を失うのなら、彼らの責任だ。両国の連合は平等な立場でのみ発展できる」とけん制した。
ロシア側も表向きは統合を急がない姿勢だが、政治評論家のアレクセイ・マカルキン氏は「年金改革で支持率が低下する中、旧ソ連のベラルーシが戻れば、(ウクライナ南部の)クリミア半島編入と同様に政権の実績となる」と指摘。さらに連合国家指導者のポストを新設することで「ロシア憲法で禁じられたプーチン氏の24年以降の任期延長問題を解決することができる」との狙いも解説する。