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「教育勅語」容認の閣議決定に対する抗議声明

「教育勅語」容認の閣議決定に対する抗議声明

2017年4月5日
埼玉教職員組合
中央執行委員長 金子 彰
埼玉高等学校教職員組合
中央執行委員長 嶋田 和彦

 3月31日、安倍内閣は民進党初鹿明博衆議院議員の質問主意書に対して、教育勅語は「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定した。また、4月3日には菅義偉官房長官が「道徳の教材として、教育勅語を使用することを否定しない」との見を示した。この一連の動きは、戦後日本の歩みを否定するものであり、断じて認めることはできない。私たちは、閣議決定に強く抗議し撤回を求めるとともに、菅官房長官の憲法違反の見解に抗議する。

 いうまでもなく教育勅語は、1948年に日本国憲法や教育基本法に反するとして、軍人勅諭とともに、衆議院で排除が決議され、参議院で失効確認の決議が行われている。つまり、教育勅語は戦後教育とは相容れないものとして否定されたのである。今回の閣議決定は、この決議との整合性がとれず、憲法違反であることは明らかである。

 「朕惟フ二」ではじまり「朕カ忠良ナル臣民タル」と呼びかける教育勅語は、主権在民の日本国憲法とは異なる、主権在君に基づく大日本帝国憲法下のものである。また、「爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭檢己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ」との部分を指し、「教育勅語の内容は現在でも通用する」との主張が与党議員から発せられている。3月8日の参議院予算委員会で、稲田防衛大臣も「教育勅語の精神である道義国家をめざすべきであること、そして親孝行だとか友だちを大切にするとか、そういう核の部分は今も大切なものとして維持しているところだ」と発言した。しかし、教育勅語の本質は、これらの徳目を実行し、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スへシ」とあるように、「いざという時には一身を捧げて皇室国家のために尽くせ」と国民に求めることにある。

 そのことを意図的に隠し、「教育勅語によいところもある」と主張する稲田防衛大臣の国会答弁は、憲法擁護義務を負う国会議員として、ましてや現職閣僚として断じて許されるものではない。残念ながら与党の国会議員のこれまでの様々な発言や、日本国憲法を「ぶざまな憲法」と悪し様に否定しようとする安倍首相の姿勢を見ると、今回の閣議決定は、憲法を改悪して大日本帝国憲法下にこの国を戻そうとする動きの一環であると受け止めざるをえない。

 教育勅語を歴史として教えるならば、「戦後確定した日本国憲法と教育基本法とは相容れず、民主主義を否定するものであるため教育勅語を国会の総意で排除し失効させた」と教えるべきであり、個々の徳目を評価するような指導は行うべきではない。

 次期学習指導要領では、中学校体育の「武道」に「銃剣道」が導入された。銃剣道は明治時代にフランスの軍隊に学び、旧日本軍の戦闘訓練に取り入れられたものである。なぜ、いま戦場での戦闘を想定した軍隊の訓練を、中学生の学習に取り入れる必要があるのか大きな疑問を感じざるをえない。小学校道徳教科書でも「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられるという事態を見ると、「戦後レジームからの脱却」を目指す安倍首相の姿勢が色濃く反映しているものと感じられる。

 以上のように、教育勅語は日本国憲法とは相容れないものである。塚本幼稚園のように、教育勅語を唱和し、軍歌を歌うような教育は否定されなければならないものである。しかし、それを安倍首相夫人や政治家たちは評価してきた。この責任は重大である。このような状況のもとで行われた安倍内閣の閣議決定は、戦後教育を否定し、日本国憲法否定へと続く道に国民を引きずり込もうとする政治的意図を持ったものである。

 教育は国民すべてに関わる重要な営みである。それを自らの政治的意図をもってねじ曲げようとする行為は断じて認められない。教育勅語が21世紀を生きる子どもたちにふさわしい教材とは言えないことは明白である。このような閣議決定や管官房長官の発言を私たちは断じて認めることはできない。重ねて撤回を求めるものである。

以上