第96回文學界新人賞を受賞した、絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』(文春文庫 2006)を読む。
東京大田区の蒲田に住む女性の奇妙な交友関係を描く表題作と、乗馬の大会中の事故で愛馬を失った女性のその後の生活を淡々と描く『第七障害』の二編が収録されている。
作者自身、会社を鬱病で休職した後に蒲田に住んでいた経験があるそうだ。蒲田という町の雑多な雰囲気に包まれた人間関係にも影響されているのか、ヤクザや痴漢、政治家などとの交友を通して、直感的に選んだ町蒲田に馴染んでいく女性の姿が印象的である。
月別アーカイブ: 2008年6月
本日の東京新聞の夕刊
本日の東京新聞の夕刊の一面は、昨日の秋葉原での通り魔殺人事件をデカデカと報じている。
東京新聞夕刊の記事より
東京都千代田区外神田四の秋葉原電気街で八日午後零時三十分ごろ、トラックが歩行者天国の路上に突っ込んで人をはね、車から降りてきた男が両刃のダガーナイフで通行人や警視庁の警察官を次々に刺した。男女七人が死亡、十人が重軽傷を負った。男は約五分後に同庁万世橋署員らに取り押さえられ、殺人未遂の現行犯で逮捕された。
捕まったのは、静岡県裾野市富沢、派遣社員加藤智大(ともひろ)容疑者(25)。調べに対し「人を殺すために今日、静岡から秋葉原に来た。誰でもよかった」「生活に疲れ、世の中が嫌になった」「秋葉原には何度か来たことがあり、人がたくさんいるので選んだ」と供述。さらに携帯電話サイトの掲示板に犯行を予告する書き込みをしたことを認めているという。同庁捜査一課は同署に捜査本部を設置し、殺人容疑に切り替えて詳しい動機を調べている。
警察庁によると、通り魔事件としては過去十年で最悪の被害とみられる。
この非道な事件に対し、関西学院大学教授の野田正彰氏は次のように述べる。
1990年代終わりから自殺が増加したが、格差社会で暮らす男たちの絶望感、挫折感は自己への攻撃性に向かっていった。しかし攻撃性が徐々に「世界がなくなれ」という他者へ向かっている印象を受ける。社会は、事件を起こした加害者の動機を解明し、事件の背景を受け止めアクションを起こさねばならない。この姿勢が犯罪の予備軍に対し、犯行を思いとどまらせるメッセージとなる。格差を改善する社会づくりを進めないと、同じ事件は今後も起こりかねない。
他の識者が社会抑止力の低下や事件当時の容疑者の精神状態など、表面的な主張にとどまっているのに対し、野田氏は一歩踏み込んで犯罪者を生んだ日本社会の土壌にまで分析を加えている。確かに20代後半から30代の男性の抱える絶望感は他の年代には理解できないものであろう。失われた十年と生涯雇用の 狭間で 他の年代はうまくやっている バブル世代
本日の東京新聞夕刊
本日の東京新聞夕刊のコラム『放射線』に名古屋大学教授福井康雄氏のコラムが載っていた。「なるほど〜」と思いながら読んだ。
先日、高校の先生方と話す機会があった。学習指導要領改定などは、ほとんど教育の改善に効き目はないだろうとのことだった。なぜかと思ってさらにうかがうと、私にとっては新しい問題が見えてきた。
印象に残ったのは、高校生の「人の話を聞く力」が弱くなったという指摘である。先生がじかに語りかけないと、関心を示さない生徒が増えている。四十人前後の生徒に先生が一人で授業する形が、今限界にきている。この傾向は低学年から、確実に進行している。ゲーム機とのにらめっこが多くの時間を占める現実が、この背景にありそうだ。
大人が子供と会話し触れ合う、「接触面積」の広いしくみが必要である。少人数の家庭でできることには限界がある。教員の数を増やし、その質と動機を高め、学校での「接面」を広げることが、真剣に検討されるべきだろう。
教育予算を増やし、教える体制をしっかりと整えることを抜きに、教育はよみがえらない。ゆとり教育という理念も、それを支えるしくみを欠いていた。国際的に見た日本の教育の予算の貧弱さは、すでに何度も指摘されている。国内総生産(GDP)に対する教育予算の割合(3.5%)は、先進国中でほぼ最下位である。経済の恵みを教育に還元すべき時である。
「人の話を聞く力」が落ちているから、教育予算を増やし教員の数を増やせという単純な主張には与したくないが、「一対一であればきちんと大人の話が聞けるのに、集団の中に入ってしまうとまるで効く耳を持たない高校生が増えている」という現場からの指摘には頷かざるを得ない。筆者の言う少人数授業をただ展開すればよいというのは表面的な改善しか見られないであろう。大事なことは「耳」で人の話を聞くのではなく、「体全体」で「動き」や「流れ」の中で相手の話を受け止めるということであろう。工夫を凝らしてみたい。
近所の本屋で
ぶらっと近所の本屋に行ったついでに、埼玉県で高校入試対策の業者テストを一手に行なっている北辰テストの案内パンフレットをもらってきた。埼玉県内の中学生の9割以上が受検する模試の業者である。私学側の必要以上の協力も得られるためか、パンフレット自体は、20年前から全く変化のないような官公庁の出す案内のようなものであった。ベネッセやZ会といったCMで名前が知られている大手ではなく、埼玉県民以外全く名前の知られていない業者に、県の高校入試制度そのものが振り回されているという現実は看過できないものであろう。
しかも、成績優秀者は会報『前進』に氏名が紹介されるという。『Z』会の会報誌に名前が載るというのも生理的に嫌なものだが、『前進』なるものに名前が掲載されるのは「頭身の毛も太る」というものであろう。
入間アウトレット
家族を連れて、入間に新しくできたアウトレットへ出掛けた。土日は大変込みまくっているらしいが、平日の午後も遅い時間ということもあり、スムーズに行くことができた。途中今年の3月に新しくできた圏央道の川島インターを利用したが、平日の昼間というのにがらがらであった。圏央道建設を巡っては高尾山の生態系の破壊を巡ってに行政訴訟になったりするなど、いささか強引な運営が目立つようだが、果たして当初の計画通りの交通量と自然との共生が確保できるのであろうか。
また、アウトレットの方は、ぶらぶらとウィンドウショッピングをするのには、丁度いい程度にこじんまりとしていた。子どもを抱っこしたり、追い掛けたり、逃げ回ったりいい運動になった。ただ入っている店は他のアウトレットと大差なく、このガソリン高騰の時期に遠出してまで行く積極的な意義は見出せなかった。
□ 三井アウトレットパーク 入間 公式サイト □