日別アーカイブ: 2005年6月28日

『桃尻語訳 枕草子 上』

橋本治『桃尻語訳 枕草子 上』(河出書房 1987)を読む。
「春って曙よ!」で有名な桃尻語訳で、何度も目にしてきた作品であるが、全編通して読んだのは初めての経験であった。しかし、この本の醍醐味は女子大生風の現代語訳ではなく、平安時代をめった切りにする解説にある。橋本氏は、聖徳太子の冠位十二階制の導入以降、日本の権力構造は政治の実権を握ることではなく、人事をめぐる権力闘争をするために生み出された制度にすぎないと喝破する。そして、権力の頂点にある天皇に何らの政治的実権がなく、さらにその天皇に近い順の序列を示すだけの位階に自らの存在意義を見出す官僚制がこの平安時代に確立されたと述べる。ついつい私たちは1000年前の平安時代は身分制社会であり、天皇、または天皇を操る摂政関白を中心とした確固たる権力構造が出来ていたと考えがちである。しかし、実態は天皇にほど近い中間層の貴族が焼け太りしただけで、