日別アーカイブ: 2003年3月30日

『新版 経済のしくみ100話』

岸本重陳『新版 経済のしくみ100話』(岩波ジュニア新書 1994)を読む。
中学高校生向けに書かれた本ほど著者の主張が明確になる分かりやすい本であった。「社会福祉」の項目で著者は福祉を次のように明瞭に定義する。耳鼻科の医者が軍医にとられて不在の折に、中耳炎をこじらせ難聴に苦しんだ著者ゆえの主張である。

自分はいま困っていないが、他には困っている人がいる。その人は、いわば自分の身代わりにそうなっているのだ。その人がそういう状態に陥った結果として、自分はそうならずにすんでいる。こう考えるべきです。たとえばサリドマイドで被害を受けた人がいる。そのおかげで自分も子どもも孫もその目に会わなくてすむと考えるべきです。逆に言えばいま困った状態にある人は、まさにそのことによって社会に報いてくれているのだと考えるべきものです。その人たちのことを、負担以上におカネをもらっている受益者だ、たかりだと言ったりすれば、彼らは、カネなどいらない、体を元にもどせと、絶叫したいはずです。今日の公害社会、誰でも被害者になりうる。「明日は我が身」「情けは他人のためならず」、社会福祉は一人一人が自分のために連帯するのです。