読書」カテゴリーアーカイブ

『遠い接近』

松本清張『遠い接近』(光文社)を読んだ。
戦前教育兵時代に受けたリンチを戦後に復讐するという代物であった。軍隊に不満を抱きつつも家族を抱えている軍人は、団体生活の中で、国家に奉仕するという方向性しか見えなくなってしまう現実がリアルに描かれていた。現在のサラリーマンも肩書きを背負ってスーツに身を包み、携帯電話と名刺とシステム手帳で武装しているのだが、現在の企業戦士との類似点がまざまざと想起された。

『イトーヨーカ堂店長会議』

塩沢茂『イトーヨーカ堂店長会議』(講談社 1986)を現在読んでいる。
この本自体はかなり古い本であるが、ヨーカ堂の社長には先見の明があったと納得した。近年ダイエーやそごうなど小売業の不振が報じられるが、ヨーカ堂やセブンイレブン、デニーズ、ダイクマといったヨーカ堂グループの低落はとんと耳にしない。春日部駅周辺には西口にイトーヨーカドーがあり、東口にはロビンソンがある。両方ともヨーカ堂グループなのだが、「競合」店として位置づけられている。しかしどちらも地域に密着して売り上げを伸ばしている。客と社員と株主と地域社会から信頼される店作りがヨーカ堂の社是なのだそうだが、この極々当たり前の在り方が大切なのだ。ヨーカ堂グループは特に新奇な宣伝や戦略を持たず、スタンダードに経営を行い成功している。
実は学校も同様である。生徒と教職員と父母・卒業生、そして地域に愛される学校でなくてはならない。少子化の中で受験生に愛されることのみを目的とした学校が高校大学問わずあるが、総合大学は必要でもそごう大学は要らない。地域に密着し、地道に生徒にこびることなく愛される教員そして学校が求められている。

『弱気の蟲』

松本清張の『弱気の蟲』(光文社)を読んだ。
賭麻雀におぼれていく公務員の姿が生々しく描かれていた。しかし作品のストーリーの背景に、私大出身ゆえに出世の道から外された課長補佐の心理も描出されていた。私は小学校3年か4年の時に『点と線』を読んで以来、時折松本清張は愛読しているが、最近は「昭和の時代小説」として楽しむことができるようになった。携帯電話が存在しなかった時代ゆえに電報やテレックスが登場してきたり、今では崩れてしまった倫理観がかいま見られたり、「昭和も過去になったなあ」と本題の推理以外のノスタルジアを味わうことができるのである。

『大人の女養成講座』

石原壮一郎『大人の女養成講座』(扶桑社 1993)を読んだ。
20代後半の「キャリア女性」を対象にした日常のマナーをしゃれ風に書いたものであるが、会社や家庭など狭い社会のなかで、人間関係をこじらせず渡り歩くことがいかに難しいことなのかということが暗に述べられていた。

『横浜殺人事件』

夏季講習が終わって最近はかなりほっとしている。この時期にたくさん本を読もうと思っている。昨日は内田康夫の『横浜殺人事件』を読んだ。
普段推理小説など読む暇がないので、ベッドに横になりながら幸せを噛みしめながら読んだ。