読書」カテゴリーアーカイブ

『銀河にひそむモンスター』

夏休みの8冊目

堀江純一『銀河にひそむモンスター』(岩波書店,1991)をパラパラと読む。
平易な文体で書かれているが、本格的な銀河に関する入門書となっている。タイトルにある銀河のモンスターとはブラックホールのことである。ブラックホールが銀河の中心にあることで、ブラックホールの超巨大な重力によって、銀河の中心には1立法光年の中に数百万個から数千万個の星が密集する。またブラックホール自体も自転しているので、磁力線が捻じ曲げられた降着円盤が存在する。そうしたブラックホールの莫大な力によって、銀河は楕円形や渦巻き型のような形で公転しているのである。
スケールが大きすぎる話であった。

『理科年表読本 気象と気候』

夏休み7冊目

高橋浩一郎・宮沢清治『理科年表読本 気象と気候』(丸善,1980)を読む。
国立天文台が毎年編纂する「理科年表」の解説本となっている。紀元前からの天文学に始まり、地球の大気や気候、雲、雨、雪、風などのしくみについて分かりやすく解説されている。

参考になったところを抜書きしておきたい。
熱帯と温帯の境目である月の平均気温が18℃は、人間の活動にもっとも適当な気温である。東京でいうと5月中旬くらいの気温(最高気温23℃、最低気温14℃)の過ごしやすい時期である。10℃は樹木が育つか否かの境の気温で、昆虫なども10℃より低いとほとんど活動できなくなる。東京で言うと3月中旬ないし11月末ごろ。−3℃は根雪になるかならないかの境の気温。

季節風は英語ではモンスーン(monsoon)と呼ばれ、アラビア語の季節を意味するマウシム(mausim)から出たと言われている。季節風は中緯度では、大陸と海洋との温度差が大きな原因となるが、ヒマラヤ山脈など東西に伸びる大きな山脈があると、冬シベリアに放射でできた寒気は低緯度に流れ出さず、強い高気圧となる。一方、アメリカ大陸はロッキー山脈のような南北に走る高い山脈はあるが、東西に伸びるものはないので、寒気はすぐに低緯度に流れ出し、強い高気圧はできない。

日本の年間雷雨日数が最も多いのは、石川・富山県と宮崎県えびの高原の40日で、ついで関東北部、美濃三河高原、琵琶湖北側、鈴鹿山脈、大分県日田地方の35日である。雷の発生はふつう初夏から盛夏にかけて多いが、日本海側では、シベリアから北西季節風が吹き付けるとき、積雲や積乱雲が発生するため、冬に多くなる。

『美しい地球・化学の森』

夏休み6冊目

社団法人日本化学学会・近畿化学協会編『美しい地球・化学の森』(三田出版会,1989)をパラパラと読む。
タイトルに「化学」とあるが、当時の最先端の工業化学の分野の紹介という内容で、血液や食中毒、ニューセラミックスや高分子、人工宝石、超伝導など、50くらいの新開発の分野について、京大、阪大、神大を中心とした関西の大学の先生が丁寧に解説している。幅広い分野であるにも関わらず、文体も写真も統一されており、編集サイドのきちんとした仕事ぶりが伝わってくる本であった。ドットの粗いCGや「メカトロニクス」という用語をみると、筑波万博の頃のワクワク感を思い出す。

『堪忍箱』

夏休み5冊目

宮部みゆき『堪忍箱』(新人物往来社,1996)を少し読む。
江戸下町を舞台にした短編集で、表題作の他7編が収録されている。「堪忍箱」と「砂村新田」の2編を読んだ。どちらも商家のしきたりや女中奉公など江戸時代をモチーフとしているが、引き込まれるような魅力のある作品となっている。

『レプリカキット』

夏休みの4冊目

長野まゆみ『レプリカキット』(学研,1992)をパラパラと読む。
自分そっくりの姿形を持ち、モデルの言葉と感情も複製することができるレプリカキットが登場するSF小説である。AIが登場した現代からみると、レトロフィーチャーな世界観となっている。文体も1990年前後の小説風なものであった。