読書」カテゴリーアーカイブ

『深夜草紙』

五木寛之『深夜草紙 Part.3』(朝日新聞社,1978)を読む。
高校生の頃の読んだことのある気がするが、シリーズものなので勘違いかもしれない。1977年から78年にかけて週刊朝日に連載されたエッセーがまとめられたものである。
自民党の総裁選に関するニュースがテレビやネットで喧しいためか、次の一節が気になった。

異国へ出た日本人の同胞の大半が、どこかでそんな感慨(水と安全はタダで手に入ると思い込んでいる日本人は楽なところに生きている)を抱いて帰ってくるのではないか、と思った。そしてその実感が、〈ニッポン良い国〉から、〈日の丸最高〉の感情へエスカレートしてゆく心理の道筋がわかるような気がした。
良い国だから守らなければならない、守るためには戸締りが必要である、という例の発想だ。

『英語発音に強くなる』

竹林滋『英語発音に強くなる』(岩波ジュニア新書,1991)の「はじめに」の項と「おわりに」の項だけ読む。
著者は『ライトハウス英和辞典』の編集を担当する音声学の研究者である。辞書的に母音、子音だけでなく、その組み合わせによる発音の変化などが細かく説明されている。動画であればもっと分かりやすいのだが、致し方ない。リスニングのコツとしてNHKの基礎講座を聞くとか、欧米人が吹き込んだテープを毎日聞くなど、30年前の時代を感じる内容であった。

『まったくわからない人のためのネットの常識』

高作義明、田中眞由美、諏訪真理子『まったくわからない人のためのネットの常識』(新星出版社,2013)を読む。
IPアドレスなどの難しい話はさらっと流して、スマホの便利な点や便利なネットサービスなど、本当にネットを触ったばかりの初心者向けの内容となっている。内容も多彩で、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、孫正義の生い立ちから事業の成功までの半生がさらっと挿入されているなどの工夫があり、飽きることなく読み終えることができた。編集のうまさが光る本であった。

『地球はふるえる』

根本順吉『地球はふるえる』〈ちくま少年図書館19〉(筑摩書房,1980)を読む。
奥付に記載されていた当時の筑摩書房の代表取締役の布川角左衛門という名前が目を引いた。
著者の根本氏は気象庁で長期予報を担当した予報官である。そのため大気大循環や100年、1000年単位の気候の変化について分かりやすく書かれている。主に1970年後半の話が中心であるが、地球寒冷化を強調していたのが気になった。1970年代から専門家の間では地球の温暖化が問題視されていたので、何か特別な根拠があったのであろうか。

江戸幕府の「江戸」とは「入江の門」という意味で、江戸城を作った頃は、日比谷、浅草、不忍池あたりまで入江が入り込んでいたことに由来する。

江戸は坂が多く、ほこりが巻き上がるところが多かったそうだ。そこから「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺が生まれている。風が吹けばほこりが舞い上がって眼病が増える、その結果めくらが多くなる。めくらが多くなるとごぜがふえる。ごぜは三味線をひくから、三味線がたくさん必要になる。三味線は猫の皮を使うから猫がたくさん殺され、そのためネズミが繁殖して風呂屋の桶をかじる。だから桶屋が繁盛するという言われである。

ティグリス・ユーフラテス川は文明発祥の地として有名だが、9世紀頃から小麦が取れなくなり、次に大麦もとれなくなり、荒廃した地帯へとなっていった。その理由は源流のトルコのアナトリア高原は岩塩があり、その岩塩を含んだ塩水が川に流れ込み、その水を灌漑に使うと、水は蒸発し塩分が土壌にたくわえらえることになる。地中に蓄えられた塩分はさらに地下水にしみこんでゆき、地下水の塩分濃度まで高くなっていく。そすいた塩分の蓄積が限度に達したのが9世紀頃だというのが著者の見解である。

『舗装と下水道の文化』

岡並木『舗装と下水道の文化』(論創社,1985)をパラパラと読む。
タイトルの通り、舗装道路の問題点と世界の下水道の歴史がまとめられている。
著者は交通問題や都市問題を担当されている朝日新聞の編集委員であり、大学の研究者ではないのだが、研究論文なみの内容となっている。パラパラと目を通しただけだが、日本は江戸時代に完璧なまでに下水のリサイクルをしていたので、欧米の真似をして下水道を通したことが果たして正解だったのか。著者は疑問を投げかける。