地理」カテゴリーアーカイブ

「マクロン氏、原発回帰鮮明」

本日の東京新聞朝刊に、原発の発電割合が70%と世界一の原発大国であるフランスのマクロン大統領が、温室効果ガスを排出しないクリーンな電源として原発の新設を再開すると発表したとの記事が掲載されていた。

フランスを含むアルプス山脈の北側は安定陸塊であり、ユーラシアプレートの中心部にあるため、数千年というスケールでもM5を超えるような地震がほとんど起きない。福島第一原発のような危険性はかなり低いと思うかもしれないが、核のゴミが無害化までには10万年かかるので、日本の六ヶ所村もフランスも”偏に風の前の塵に同じ”である。

「RCEP アジア貿易効果期待」

本日の東京新聞朝刊に、東南アジア連合に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国を加えた15ヵ国で発足する地域的な包括的経済連携協定(Regional Comprehensive Economic Partnership:RCEP)について、メリットや今後の課題を含めて分かりやすく説明されていた。来年の授業からは大きく取り上げることになるであろう。

記事の最後の方にもある通り、日本が米中両にらみの立ち位置をとるべきだとの指摘は正しいと思う。台湾だけでなく南シナ海の南沙諸島やミャンマーの軍事政権支援など近年の中国の拡大を牽制しつつ、米国のおせっかいな介入を防いでいく積極的中立姿勢が必要な場面である。

また、物や金だけでなく、貿易や投資ルールの自由化・円滑化、労働力の移動の促進など、多方面の分野での連携を押し進める経済連携協定なので、閉鎖的な日本の法制度や商慣習が代わっていくチャンスでもある。

  • EPA:貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定

 

「難民押し寄せ EU緊迫」

本日の東京新聞朝刊に、旧ソ連のベラルーシ国境に中東から約3000人の難民が押し寄せ、EU加盟国のポーランドに侵入しようと国境付近でのせめぎ合いが生じているとの記事が掲載されていた。
先月の授業でもとり上げたが、トルコとギリシアの国境付近での衝突とよく似た話である。EU加盟国は「シェンゲン圏(The Schengen Area)」という領域を形成し、EU域内では、EU市民であるかEU域外国の人であるかにかかわらず、旅券(パスポート)検査などの出入国審査(域内国境管理)が廃止される協定が結ばれている。もちろん自由にEUに入ることはできないが、一度入ってしまえば、さまざま制限はあるが工場や農場で働き、生活することができる。ましてやポーランドはドイツに近いため、ギリシア以上に難民にとっては好都合である。

それにしても奇妙な話である。なぜ、急にイラク難民が言語も宗教も気候も異なるベラルーシにやってきたのであろうか。記事にもある通り、独裁体制を敷いて長期に政権の座に居座るルカシェンコ大統領の影がちらつく。ルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領が密約してEUを困らせるような対応をしているのであれば、難民を政治利用した許せない行為である。

「燃料高騰追い風 ロシア輸出攻勢」

本日の東京新聞夕刊より。
世界的に脱化石燃料の風潮が強まり、値段が高騰する中、天然ガス、原油、石炭とも輸出量で世界第3位に入るロシアが積極的な資源外交を展開しているという内容だ。経済封鎖の真っ只中にある北朝鮮を巻き込んだ石炭輸出ルートや、親ロ色が強いハンガリーとの長期にわたる天然ガスの供給計画、トルコを経由した天然ガスパイプラインの建設、インドへのコークス炭の輸出など、授業の教材研究にぴったりの内容であった。ロシアのところで、プーチン政権の推し進める資源外交について触れたい。

「中央アジア3ヵ国 タリバン政権への対応 温度差」

本日の東京新聞朝刊に、久しぶりにトルクメニスタンに関する記事が掲載されていた。トルクメニスタンは1991年に旧ソ連から独立して以来、ニヤゾフとベルディムハメドフの2人しか大統領になっていない、極めて独裁色の濃い国である。1995年に国連から「永世中立国」に認定され、隣国とも政治的関係を絶っている国である。埋蔵量世界第4位の豊富な天然ガスを有し、大規模な灌漑による綿花栽培と合わせて、着実な経済成長を実現している国でもある。地獄の門とも呼ばれる、24時間365日燃え続ける天然ガス田のダルヴァザ・ガス・クレータが有名である。授業中に動画を紹介したクラスもある。

そんなトルクメニスタンは内陸国であるため、天然ガスを輸出するにはパイプラインを敷設するしかない。しかし、北はカザフスタンやウズベキスタン、南はイラン、カスピ海を超えた西岸はアゼルバイジャンと資源国に囲まれている。そのため、どことも同盟関係を組んでいないトルクメニスタンとしては、アフガニスタン、そして人口が多いパキスタンやインドまでパイプラインを通したい思惑が強い。アフガニスタンのタリバン政権はここしばらく安泰であろう。