大学短大専門学校案内」カテゴリーアーカイブ

パンフレット研究:明星大学

大学名や教育学部に力を入れているところから、大正自由教育運動の明星学園の流れを汲む伝統のある学校かと思っていた。しかし、よく調べてみると、明星大学の設立法人は「明星学苑」であり、大正自由教育運動の流れで設立された「明星学園」とは全くの別物であった。
明星大学は1923年に設立された明星実務学校を母体として、1964年に開設され、現在では、経営学部、経済学部、教育学部、人文学部、情報学部、理工学部、造形芸術学部の7学部を擁する総合大学へと発展している。多摩モノレールの「中央大学・明星大学駅」に直結している日野キャンパスにほとんどの学生が集まっている。造形芸術学部の2〜4年生のみがJR青梅線「河辺」駅からバスで15分の、通学に不便な青梅キャンパスで学ぶ。
大学パンフレットをいくつも手にしてきたが、これまで読んできたパンフレットの中で1、2位を争うほどスカスカな内容であった。唯一東京都公立小学校採用試験現役合格者数ランキングで4位に入っている教職サポートに力が入っている程度で、あとは20年以上前かと思うような学科や講座の説明、カリキュラム、時間割モデルが並んでいる。しかもテキトーにただ並べただけの全学共通科目と何のつながりも感じられない専門科目が並んでいるだけのカリキュラムを見るに、大学全体のやる気のなさがひしひしと伝わってくる。経営学部の1年生前期の時間割モデルでは週に10コマしか授業が入っていない。また「キャリア開発」といった就職支援の授業が堂々と正課の授業となっている。経済学部「キャリア特別講義」なる怪しげな授業が4年間で6コマも用意されている。人文学部心理学科に至っては、1年時に10単位しか専門科目が無く、なおかつ4年時には専門ゼミのみしか授業が置かれていない。教育学部や情報、理工、芸術の各学部はパンフレットを見る限りは、びっくりするような問題点は見つからない。しかし、就職にも語学にも力を入れている様子は無く、ただ漫然と奇麗な校舎で4年間を過ごしたい学生にはうってつけな場と時間が提供されるのであろう。早晩にも消えてしまいそうな大学ナンバーワンであった。

パンフレット研究:和光大学

和光大学は1934年成城学園を母胎とする和光小学校の開校に始まる。1947年に和光中学校・高等学校が開校し、1966年に人間関係学科・文学科・芸術学科からなる人文学部と経済学部経済学科の2学部4学科の大学がスタートしている。その後、改組が続き、現在では心理教育学科・現代社会学科・身体環境共生学科からなる現代人間学部と、総合文化学科と芸術学科からなる表現学部、経済学科・経営学科からなる経済学部の3学部7学科で構成されている。

東京都町田市の小田急線鶴川駅から徒歩15分という辺鄙なキャンパスで4年間全学生が学ぶ。キャンパスの場所柄か、AO入試やセンター利用入試などあるが、どの学部学科も1倍台と苦戦を強いられている。1年間の授業料と施設費の計100万円近くが全額免除となる特待生選抜が行われている。試験の合計得点が8割を越えた者全員を選抜するとあるが、学科によっては11名受けて全員不合格となるなど、ハードルは高い。

首都圏の偏差値ランクでは下位に甘んじているが、都道府県別の志願者・合格者数を見ると、日本全国から学生が集まっている。特に、クラーク記念国際やあずさ第一などの通信制高校や、自由の森学園や北星学園余市など自由な校風の学校の出身者が多いのが特徴である。

私が学生であった1990年代半ばでも、首都圏の大学とは異なり和光大学だけは、新左翼党派が絡んだ学生の自治活動が大学当局によって保証されていた。

パンフレット冒頭の学長挨拶の言葉がよく大学の性格を表している。引用してみたい。

大学とは、自由な研究と学習の共同体である。
梅根悟・初代学長は、そんな理念を掲げ、和光大学を「小さな実験大学」と呼びました。
その思いは、今も和光大学のすべてに息づいています。
教職員と学生との距離が近いと言われます。
学生の自主性や対話を大切にし、積極性を伸ばす、個性的な大学であるとも言われています。
そして、みなさんが自分を磨くことについて、心の広い大学だと思っています。
人という点が動くことによって、人間関係という線のつながりになり、
さらに面になり、より広い「人間広場」ができます。
こうした人間広場がさまざまに組み合わさって、和光大学という学びの空間になっています。
夢や理想を語り合える、情熱をぶつけ合いながら学問を楽しむことのできる、
かけがえのない自由な場ーそれが、和光大学です。

パンフレット研究:昭和大学

1928年に設立された昭和医学専門学校を始まりとし、1946年昭和医科大学となり、1964年薬学部設置、1965年富士吉田校舎開設、1977年歯学部設置、そして、2002年保険医療学部が設置されている。現在では医学部、歯学部、薬学部に加え、看護学科・理学療法学科・作業療法学科の3学科からなる保健医療学部の4学部体制となっている。戦前からの伝統ある私大医学部の旧設八医科大学の一つである。
得てして糊塗しがちな入試や就職データであるが、昭和大学のパンフレットはここ数年の志願者数や合格者数、また、学費や近年の国家試験合格率も、グラフや表で分かりやすく掲載されており、大変好感持てる内容である。
昭和大学の第一の特徴は、1年時に全学部の学生が富士吉田キャンパスで全寮生活を送り、4人一部屋で寝食ともにする間柄で「チーム医療」を学ぶ制度である。費用は寮費・食費・寝具類費含めて727,000円となっており、比較的リーズナブルな料金で寮生活を送ることができる。18歳、19歳の若者が中心なので、様々な衝突はあるだろうが、医療人としてのタフなコミュニケーション能力育成の場としてはすばらしい環境である。
また付属病院が東京神奈川を中心に8つもあり、臨床医しての研修の場も充実している。付属病院の売り上げもあるのであろうか、2014年度入学生より大幅な学費改定があり、6年間の学費が450万円値下げされ、2200万となっている。さらに高得点者や地域医療選抜合格者はさらに300万円下がり、1900万円となる。これは慶応大学や順天堂大学よりも安い。歯学部は医学部よりも高くて2450万円、薬学部は1150万円となっている。一方で看護学部は充実した環境の反面少し高めであり、640万円となっている。
作業療法学科の卒業生の93.6%が医療機関に就職しているというのも驚きである。
また部活動や学園祭も充実しており、親としては子ども(優秀ならば)を通わせたい思ってしまう大学である。
CMで大学名が連呼されるので、「松本歯科大学」と同様によほど人が集まらない大学なのかと思っていたが、内容が充実している上に学費も大幅に値下げされ、諸手を上げて賞賛したい大学であった。

パンフレット研究:鶴見大学

JR京浜東北線鶴見駅、京急鶴見駅から徒歩5分の場所にあり、通学しやすい大学である。
近隣にある曹洞宗總持寺が関与し、1953年に鶴見女子短期大学(国文科)が設置、1962年に保育科・保健科増設。1963年に鶴見女子大学に改組され文学部(国文科・英文科)が設置され、1970年に歯学部が設置されている。文学部の方は長らく女子大であったが、1998年に男女共学となっている。現在は歯学部歯学科、日本文学科、英語英米文学科、文化財学科、ドキュメンテーション学科からなる文学部、保育科・歯科衛生科からなる短期大学部で構成されている。
歯学部は同じ敷地内に内科や循環器科も併設されて付属病院が置かれ、研究体制も整っている。しかし、6年間で3000万以上の学費や歯科医師余りが敬遠されてか、定員割れの状況である。今後も改善される見込みは薄く、国公立への委託など何かしらの公的支援が必要となってくるであろう。
文学部は書道免許も取れる日本文学科や、考古学や神社仏閣を学べる文化財学、図書館学や情報学まで学べるドキュメンテーション学科など、それぞれの学科の個性がはっきりしているためか、定員はしっかりと確保されている。元女子大学ならではのきめ細かい指導が学生に支持されているのであろう。また図書館が充実しており、大学図書館ランキング(どういう基準なのかは明らかではない)ではトップ10に入っているそうだ。
短大保育科は2年間で「幼稚園教諭2種免許」と「保育士資格」の2つを取得することができる。

パンフレット研究:立教女学院短期大学

1877年にアメリカから派遣された宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズによって設立された立教女学院が母胎となっている。戦前の段階で尋常小学校、旧制女学校が設立されており、戦後に小・中・高校と整備され、1967年に短期大学(英語科)が設置され、1970年に幼児教育科が設置されている。2013年には英語科が現代コミュニケーション学科に改組されているが、短期大学としては英語と児童という学科構成でシンプルにまとまっている。進学校として有名な付属の高校の受け皿的な側面の強い大学で、1学年300人の小規模校のアットホームな雰囲気を売りとしている。
校名の通り、創立者を同じくする立教大学とは系列の関係となっており、立教女学院高校からは7割近くが立教大学へ特別推薦入学をしている。但し、短大からの立教大学への推薦編入については、2011年度より廃止されている。
幼児教育科は2年で幼稚園教諭2種免許、さらに専攻科で1年学ぶことで保育士の資格が取れるカリキュラムになっており、2年制で両方取得できる他校に比べ、時間割もゆったりとしている。
2012年度のパンフレットを読む限り、幼児教育科は一般入試でも2倍以上、センター利用入試では3倍以上の倍率であるが、英語科はほぼ全入状態である。この数字は、ありきたりな英語プログラムや教養科目だけのキリスト教精神、外国人ALTや仲介業者主導の留学制度といったお手盛りな大学経営では通用しなくなった現実を示している。また幼児教育科も公立保育所への就職サポートは手薄であり、「都心」や「立教」という看板に頼りがちな実態が垣間見える。