投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『滝山コミューン一九七四』

原武史『滝山コミューン一九七四』(講談社,2007)を読む。
非常に面食らう内容であった。自費出版本かと思うほど、自身の小学校時代の細かいエピソードが多く、途中で嫌気が差したが、武蔵野線の開通や西武線沿線と東急線沿線の街作りの違いなどの話が興味深く最後まで一気読みした。

1974年という時代は過激な大学闘争こそ終息したが、全共闘世代が大学卒業後に教員になった頃で、革新勢力が国政や地方政治でも台頭する時期とも重なる。著者が通っていた東京都東久留米市第七小学校では、「民主主義」の名の下に、選挙で選ばれた児童委員会が活発に機能し、係活動や班競争が展開されていた。著者が当時住んでいた滝山団地は、サラリーマンの父と専業主婦の母と子供2人という典型的な核家族が居住するところであった。そうした好条件も重なったこともあり、著者自身もそれ以降の人生で経験できないほどの、民主的な議論があったと振り返る。
著者は最後に次のように述べる。

2006年12月に教育基本法が改正される根拠となったのは、GHQの干渉を受けて制定されたために「個人の尊厳」を強調しすぎた結果、個人と国家や伝統との結びつきがあいまいになり、戦後教育の荒廃を招いたという歴史観であった。だが果たして、旧教育基本法のもとで「個人の尊厳」は強調されてきたのか。問い直されるべきなのは、旧教育基本法の中身よりも、むしろこのような歴史観そのものではなかったか。

『文章構成法』

樺島忠夫『文章構成法』(講談社現代新書,1980)をパラパラと読む。
手に取ったのが、1994年発行の第27冊版だったので、かなりのベストセラーであったようだ。
著者は小学校中学校での作文指導の研修も担当され、日本語文章能力検定協会顧問も務めていた文章作成のプロである。句読点の打ち方や主語述語の一文レベルの文法ではなく、主題を明確にし、主題を効果的に読者に伝えるための文章構成法が紹介されている。

小論文の構成法として、問題提起と結論の間に、観察予告と観察結果、仮説の提示、研究実践と研究結果を入れることで、文章の根幹がしっかりすると述べる。

『散歩する精神』

長田弘『散歩する精神』(岩波書店,1991)をパラパラと読む。
40本近いヨーロッパの寓話が収められているのだが、テーマが全く分からない。最後にドイツの詩人エンツェンスベンガーとの対談が紹介されているのだが、何について語り合っているのか、全く分からない。あとがきを読んでも何が言いたいのか分からない。読者を煙に巻くような本であった。

『日本の現代小説』

中村光夫『日本の現代小説』(岩波新書,1992)を手に取ってみた。
学生時代に卒業論文の参考文献として読んでいた本である。ところどころに付箋が貼ってあった。大正末期の私小説から、新感覚派、プロレタリア文学、昭和十年代、敗戦前後、戦後文学と時代順に章立てされている。私自身が卒論で芥川龍之介と有島武郎の自殺に始まり、1930年代の中野重治を扱ったので、まさに卒業論文の下敷きとなった内容となっている。

『きらわれものの草の話』

松中昭一『きらわれものの草の話:雑草と人間』(岩波ジュニア新書,1999)をパラパラと読む。
前半は雑草の定義や、雑草に分類されるタンポポやヒガンバナ、オオバコなどの紹介で読みやすいが、後半は著者の専門の除草剤の話で、化学式だらけの専門書のような内容でほとんど読み飛ばした。

一つ印象深かったのが、水稲と陸稲の違いである。陸稲は雑草との競争力が一番弱い作物とされて除草剤が欠かせいない。一方で、水稲は畑に水を張って湛水状態にするため、普通の畑の雑草は腐敗して枯死してしまう。実験で湛水になればなるほど、雑草の量が大きく減少することが分かっており、水田に水を張るという行為そのものが、除草の役目を果たしているのである。